霧雨の視界
次の瞬間。
黒い閃光が走った。浮いた硝子をことごとく仕留め、砕ける音と、放たれたそれが頬を掠めて赤い線を残せばユウは思わず目を開いて硬直した。
前方、低い建物の小屋根の上。金色の髪を靡かせて見つめる少年が一人。
「ユウ!」
対するリオンも二の腕を掠めた程度。……いや。
「馬鹿っ、気を取られるな!」
――その油断が。
「もう遅えよ」
リオンが振り返った、その隙にダークルカリオは駆け出して。向き直るよりも早く横を抜けて背後に回り込み、こめかみの辺りに手で触れた。ユウが念力を発動するがその頃にはダークルカリオも煙状と化し、先程と同じ位置に逃れて。
「づぁ、ッ」
リオンが呻いて跪く。
まさか、目をやられたのか。ユウは駆け寄って。
「どうした。何をされた」
それまで片手で両目を覆っていたリオンは、ようやく解放した。
「くくっ」
ダークルカリオは不適に笑う。
「大したことはしてねえよ」