霧雨の視界



「貴様の能力で何とかならないのか」
「ハッカーがハッカーから情報を取れと言っているようなものだ」

奪う術を心得ている者が奪われる可能性を考慮していないはずがない。

「……そうか」

詰まる所、真意への突破は難しく。

敵もそう簡単に許すつもりはないらしい。

「仕方ないな」

――口を開かないのであれば。いずれ殺すことになるであろう相手なら、誰も文句は言わないだろう。この機会を逃すのも正直惜しい。

奴の言動がどうであれ、選び取ることになっただろう選択だ。

「リオン。目を見張っていろ」

ユウの瞳が金色に瞬く。刹那近くの壁に立てかけてあったガラス板にひびが入り、砕けた。数こそ少ないものの、ふわり念力に従って浮遊する、先端を何よりも鋭く尖らせたその破片はまともに受ければ一溜まりもない。急所であれば尚更だ。

「死の間際であれば隙くらい生じるだろう」

ダークルカリオは向けられる幾つかの硝子の破片に目を細めた。

「……悪く思わないことだな」


よお。これじゃどっちが悪役だなんててめえらは思ってるだろうが。

本物の悪はもっと酷いことをするんだぜ――?


「っ、」

……なんだ?

長く尾を引いて天に向かい、吠える。これは、遠吠えか?
 
 
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