霧雨の視界
はっと気付いて視線を下ろした時には遅く。
腹部に翳された手のひらには既に波導弾が生成されており、間もなく放たれた。
「がッ」
直撃を受ければ一溜まりもない。吹き飛ばされたダークミュウツーはその先にあった建物の壁に背中から激突。コンクリートの壁は抉れ、砂埃が舞い上がる。
声を洩らしたと同時に彼の口からは鮮血がこぼれ落ちた。程なくしてその体は無抵抗に地面へと真っ逆さま。ダークルカリオは入れ替わるように体を起こして跪いたが、一瞥くれた後方のダークミュウツーは対象的にぴくりとも動かない。
「無意味な戦いにいつまでも意地を張る必要はないだろう」
ゆっくりと地面に降り立つユウをダークルカリオは睨みつける。
「此方が問うのは貴様達の目的だけだ」
念力を解いてその瞳が紫色に落ち着くと同時に、浮遊を許されていたリオンは地面に着地した。彼は元々浮遊能力を持たない。その為先程の空中戦は、ユウの念力によるサポートを受けることによって活躍していたのである。
「……手間を取らせるな。これ以上は面倒になる」
体力の差は歴然。それも此方側は一匹が戦闘不能ときた。
今の発言から察するに、これ以上情報を出し惜しみすれば強行手段に出るぞといったある種の脅しのようなものだろう。いくら考えを巡らせたところで、無駄だ。
「うん?」
こいつに読まれる。くそ、同じ能力者のはずなのに。
……同じ、か。