霧雨の視界
「くっ……」
なんだ、今の。
能力は発動したはずだ。なのにそれよりも早く、此方の動きを捉えた?
未来を見通す予知能力と心の中を読み取る読心力――能力は全く同じ、差はないものだと高を括ってかかったが甘かった。
「ん?」
続けて攻撃を仕掛けようと詰め寄ったが刹那、ダークルカリオの姿は足下から頭の先まで瞳の赤を残して瞬く間に黒く染め上がって。続けて煙状化、波導を宿したリオンの腕の薙ぎ払いを透かして後方、倒れたダークミュウツーの傍らで実体化。
「凄いな。今のがダークシャドウの特殊技か」
ダークルカリオは片膝と片手をそれぞれ付いた体勢で睨みつけて。
「敵に感心を抱くな」
その時、ダークミュウツーが腕を立てて上体をゆっくりと起こしながら、それに反してばっと顔を上げると瞳をより赤く染めた。リオンに呆れて小さく溜め息を吐き出すユウの後方、傍ら。幾つかのドラム缶が持ち上がって投げつけられる。
ところがそれは急に進路を変えると、壁に勢いよくのめり込んだ。そっと瞼を開いて視線を向けるユウの瞳は、やはり金色に染まっていて。
「……さて」
道理で。
「目的を問おうか」
敵さんのリーダーも的確に判断を下しやがる。
こいつらは単純に、強い――!