霧雨の視界
――好きにしろ。
喧しい声の最中で冷たい瞳を向ける。
――思い残すことがないように。
幼い頃からそうだった。
未来をその目に映し出す優秀な超能力者の血筋をひいていた自分は、嫌悪や好奇の目に晒されて非常に冷えきっていた。
――どうせ。貴様も明日には死ぬのだから。
この目に見えるのは幸せじゃない。言ってみれば、不幸。
命に関わる危機の直前。
死の間際。
危険を予知できるのであればある種幸せじゃないのかと人は軽々しく吐く。
そうじゃない。分からないだろうな。
お前たちは幸せだ。
私なんかより、ずっと。
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