第二章
意味深に吐き捨てられた言葉を呼び止めてまで深く追及しようとは思わない。自動ドアが完全に閉まった後でソニックはすっとそれまで浮かべていた表情を無に帰すと入り口からは死角となる物陰に視線を遣った。そこには彼のパートナーである傭兵スネークの手によって口を塞がれた状態で捕まっているピットが未だ状況を理解できない様子で焦りや困惑といったごもっともな感情を表情に滲ませていて。
凡そ仲間に対する仕打ちではない、でも。
……今は。
「!」
試合の展開が気になるのであれば目を離すべきではなかったのかもしれない──不意に沸き立つ室内にソニックは目を丸くして振り返った。どうやらこの瞬間まで先行していたルーティが遂に一点を返されたようなのである。まったくどうしてこれが記念すべきトーナメントの第一回戦目だというのにまるで優勝を懸けたかのような盛り上がりなのやら。後々まで喉を保てるのか否か知ったことではないがある意味では先が思いやられてしまう。
「なにしてんだよ?」
いい加減に指摘された。
「そんなとこで」
首を傾げたのはトゥーンだった。「ああ、」と答えたソニックが目配せをするとスネークはようやくピットを解放。ぶはぁっと息を吐き出し即座に事情を訊ねようとするピットだったが両者から神妙な面持ちで視線を刺されて、止めた。何も知らないトゥーンは訝しげに見つめていたが他の誰かに告げ口する様子もなくそれどころか試合の展開により一層沸き立つ仲間達に釣られたのかモニター画面に向き直り、あっさり思考を塗り替えられたようで。
「ピット」
スネークが耳打ちする。
「詳しい話はまた後だ」
ボク達は。
仲間、なんだよな?
「いけいけぇー!」
「ここで負けたら承知しないぞおっ!」
モニター画面の中では先程マリオ達の会話の中で名前の挙がった人物が何も知らない少年を相手に善戦を繰り広げている。両者譲らずといった見応えのある試合に釘付けとなる仲間達の中でどれだけの数が水面下で蠢く思惑に気付けているというのだろう。
そう。
これはただX部隊のリーダーを決める為だけに開かれたトーナメントじゃない。
「っ……」
喝采が沸き起こる中でピットは一人置いていかれたかのような疎外感すら感じてしまいながら人知れず静かに拳を握った。そうして交錯する思惑を大多数は"まだ"知る由もない。
特殊防衛部隊X部隊の結成から早一週間。記念すべきトーナメントの第一回戦目はそんな思惑などいざ知らず幕を閉じようとしていた──
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