第二章



はてさて。右も左も退路を断たれてしまったところで虚しいかな時間切れの合図。まさか笛の音だの警告音だのが鳴り響いたという訳ではないがトーナメントを取り仕切っている様子のリンクに位置に付くよう促されてしまったのでは逃げようがない……ルーティは苦笑混じりにパネルの上まで歩いていくと大きく溜め息を吐いた後でパッと顔を上げた。

ウジウジしていたって仕方ない。僕だってX部隊に入る為にトーナメントを勝ち抜いたんだ、こうなった以上は恥をかかないようにせめて悔いのない結果を残さなくちゃ! 一人意気込んで拳を握っている間に足下のパネルに淡い光が灯る。光は機械の操作の元粒子を上らせて視界を妨げるほどに溢れ出すとやがて思考も何も真っ白な世界へと誘って──


歓声が響く。

それはまるであの日の再現のようだった。


「……!」

紺碧の空に鮮やかな花が咲く。歓声に囲われた舞台の中央に描かれたモンスターボールの模様が印象深いこの場所は覚えがないのに馴染みがある──呆気に取られるルーティの向かい側に程なく転送されてきた男は打って変わってあっけらかんとしていた。短く息を吐いてフィンガーレスグローブの裾を引く様子は自分は今すぐにでも勝負を始められるのだと明言しているかのようで。

「……よし」
「ま、待って!」

勝負にそんなものがあるはずもない。

「ぼ……僕、まだこのシステムに慣れてなくて」

フォックスは目を丸くする。

「……念の為聞いておくけど油断させるつもりとかじゃないよな」
「ちちちっ、違うから!」

ルーティは慌てて両手を振って否定。

「はは。冗談だよ」

とても大きな声では言えないけどフォックスの年齢を聞いた時は驚いたな。ユウやリムと同い年だ、なんて言ってたら間違いなく信じてたもん。そのくらい顔立ちに幼さが残るというか──もちろん良い意味で! だからこそこういった一枚上手の対応をされると僕なんかよりずっと大人だなぁって再認識する。そんなことはさておき乾いた笑みを浮かべて返したルーティは改めて辺りをぐるっと見回した。こうしている間にも試合中に使用できるアイテムが周辺に現れたり、その中でもボム兵やスーパーキノコ等といったアイテムは独りでに動いて足場の上をウロウロした後に消失したり。いつまでも勝負の始まらないこの様子もモニター画面越しにバトルルームにいる皆には見えているんだろうな。……

「っふー」

注目されているんだ。

「よし!」

ルーティは己に気合いを叩き入れるかのように頬を両手で叩いて顔を上げた。

「……どんとこい!」
 
 
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