第二章



しまった。ドレッシングのかかっていない素材の味そのままの野菜が妙に残ってしまった。サラダは集中して最初に片付けておくべきだったな……箸で摘んだ緑野菜で器の内側を撫でることで僅かに残されたドレッシングが付着してくれないだろうか等と密かにルーティが足掻いていればもう既に食事を終えていた二人の視線に気付いて。みっともないところを見られてしまったなと苦笑いを浮かべつつ、

「そ、そういえばさ!」

状況の誤魔化しを試みる。

「二人はどうしてX部隊に入ったの?」


音が止まった。


「うーん」

……ような気がした。

「ボク、天使なんだけどさ」

彼には真っ白な翼が背中から生えていた。それに加えて亜麻布あまぬのを用いた衣服を纏っているのだから訊ねるまでもない。さてはボケのつもりで此方の出方を窺っているなと小さく笑みを零したルーティは返答するべく口を半分ほど開いたが。

「飛べないんだ」

……結ばざるを得なかった。

「あっ!」

ピットは焦った様子で冷や汗を垂れると。

「難しく考えないでほしいんだ!」

両手を振った後で。

「ボク、パルテナ様の──光の女神様なんだけど。その人の親衛隊の隊長をやってるんだよ」
「そうなんだ。……凄いね?」

微笑するルーティにピットは照れ臭そうに笑う。

「天使の癖にパルテナ様の力を借りないとまともに空も飛べなくて。足を引っ張ってばかりなのにたまたま上手く出来ただけのことを凄い凄いって周りに褒められるのが嬉しいのに素直に喜べなくて」

ルーティは思わず眉を下げる。……自分もピカチュウに進化する前のピチューだった頃は大きな野生動物に追いかけられては周りに助けてもらってばかりだったっけ。それなのに無我夢中で放った電撃がたまたま相手を驚かせて追っ払ってそれを褒めちぎってもらえた時は素直に喜べなかったのを覚えてる。僕よりも評価されるべき人は他にたくさん居るのに──なんて不毛なこと考えたりして。

「優しいんだね」
「えっ」

境遇を重ねておきながらまさか自分がそうだとは言えないが彼に関しては間違いなくそうだと思った。だからこそ口を突いて出たのだ。

「あ、あはは」
「それで?」

ピットは気まずそうに頬を人差し指で掻く。

「飛び出してきちゃったんだ?」

頬杖をつきながらカービィが言えば当の本人は非常に分かりやすく体を跳ねた。ルーティは「えっ」と目を丸くすると思わず前のめりになりながら、

「家出してきたの!?」
「ち、違うよ!」

ピットは首と手をブンブン。

「パルテナ様には事情を話したし招待状が届いた時は嬉しかったし!」

そっか……とルーティが椅子に座り直せばピットは胸を撫で下ろしながら。

「昔から天界から見た下界の景色が好きだったし、空を飛べないボクにも出来ることがあるならそれに応えたかった。それだけだよ」
 
 
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