第一章



天空大都市レイアーゼ直通の飛行機は十時発。それに対し現在の時刻が九時ともなれば絶望的に見えるがこれに関しては諸々の手続きを前以て済ませてあるので後は乗り込むだけで無問題……おっと荷物に関してもご心配なく。

何せX部隊として活動するにあたって各々の実家から通っていては緊急事態に応えられない──というわけで前以て活動拠点となる場所を与えられておりルーティも今日この日からそこで世話になる為予め貴重品含む荷物は搬送してあるのだ。

はてさて問題なのは本来九時にはリムの話していた"パートナー"と合流していなければならなかったという点で初対面にも関わらず待ちぼうけにさせてしまっている現状は一周回って超の付く悪状況。


初日から何をやってるんだ、僕は!

寝坊した上にパートナーの人を待たせるなんて!


「こらっ、ルーティ!」

飛び出す直前にリビングのテーブルの上に素敵な朝食が窺えたが頂く暇もない。真っ先に洗面所に飛び込んで洗顔と歯磨きだけは済ませて髪を整えるのはこの際後回し。横切った際に「ああっ!」なんて身嗜みに厳しいリムが声を上げたが構ってられず。

「ごめんなさぁぁぁい!」

なんて情けない声と共に出陣。

「あっ!」

朝からこうも賑やかな様だったお陰で察したのだろう扉が閉まる直前声を上げたルピリアのどたどたと階段を駆け上がる音が聞こえて。

「こぉらぁああぁあっ!?」
「ごめんってばぁぁぁ!?」


本当に。

こんな調子で大丈夫なんだろうか……


「おおっ、早いねえ」
「おはようございますっ!」
「ルーティちゃんお出かけ?」
「部隊に入るんです!」

森林都市メヌエルはトレーナー基人間とポケモンが共存する森林都市の肩書きに恥じない自然に恵まれた都市(都市とは名ばかりの田舎の景観だが)。ルーティ達のように人型のポケモンが存在するのはこの都市の中心部に位置する聖樹が関係しているからなのだがここでは割愛──兎角その聖樹のお陰でルーティ達は人と同じ姿を保っていられるのである。

「頑張ってねえ」

はてさて。田舎特有の挨拶の連鎖。

息せき駆けるルーティに(特に目立って高齢者が)無遠慮に声をかける、かける。自分はともかく残された母親はこれから先も近所付き合いがあるだろうにこうして普段より早口で通りすがり際に返すだけという傍目にすると雑だと見て取れる対応では、フォンさんの御宅ではああなのよこうなのよとよくない噂が立ってしまわないか心配になる。


大袈裟なものか。

田舎なんてそんなものなのだ。


「はいっ!」

世間体なんて気にしたところで身を置く場所は地から天への大出世だというのに十六年も過ごした地を無下にできるはずもない。

「いってきますっ!」

声を出すのだって運動のひとつ!

戦士になるんだから積極的に力を付けなくちゃ!
 
 
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