第二章
これが例えばゲームの世界なら今の稽古によってどれだけ能力値が上がったのか確認出来そうなものだが現実はそうはいかない。そうはいかないからこそ──実感が湧かない。何となく攻撃の切り返しはああだとか防御や回避はこうじゃなくてああするだとか頭には入っていても実戦で上手く反映させることが出来るかどうかイメージすることだって。
「……本当に」
ルーティは傷だらけの手のひらを見つめながら。
「こんなことをして……動きが良くなったりするのかな……」
至極純粋な心からの悩みだったからこそ発言自体に悪気はなかった。それ自体は周囲も汲み取ってくれたようで余計な声掛けはしまいと押し黙っていたが内一人であるロイはルーティに歩み寄ると。
「ルーティ。お前の気持ちは痛いほど分かる」
横から肩を組んで繰り返し頷きながら。
「ナントカボールみたいにパワーアップしたら金髪になるとかだったら分かりやすいのにな」
「ぼ、僕元々金髪だから……」
「あそっか。じゃあ何色がいいよ?」
「うーん。黒色とか?」
「カッケーじゃん」
笑うロイにルーティも釣られて小さく笑う。
「いつか黒髪になれるよう頑張ろーぜ」
暗く沈んだ思考が。
解きほぐされていくような──そんな感覚がした。
「あ、美容院とかいう近道は無しな?」
「そんなことしないよ」
ルーティはくすくすと笑う。
「朝ご飯食べようよ!」
「うんっ!」
「さんせーい!」
人差し指を立てながら提案するピットにすっかり立ち直った様子のルーティが元気よく頷いて応えればこれまた負けじと勢いよく手を挙げながらカービィが賛同といった傍目に眩しい三連コンボ。
「よし!」
ロイはルーティを解放すると。
「そういうわけだから今日の稽古はこの辺に──」
「貴様は戻って剣を振れ!」
えぇー、と項垂れるロイに苦笑い。
……ウルフより厳しい上にちょっとだけ怖いかも。