第二章
現在の時刻は──なんと、早朝の五時。
早起きは三文の徳だの話していたのは何処の誰だっただろう。確かに朝から体を動かすのは健康的だとは思うけれどそれならランニングとか筋トレとか。四時頃には叩き起こされて少しの準備運動の後に手合わせだもんな。筋肉痛にまでは至ってないがそれどころかいつか腕だの脚だのを持っていかれそうで怖い。あれは間違いなく本気の目だった。
「大変だねぇ」
ピットは神弓と呼ばれる弓にも双剣にもなる武器を使って戦うがもちろん剣士ではない。パートナーであるロイがメタナイトの稽古で起きるのに釣られて目が覚めるのでたまに見学に来ているという話。
「心配性」
といった具合に声を飛ばしたのはカービィ。
「ちょっと大袈裟じゃない?」
恐らくは先程メタナイトが剣を差し込むような形で止めた時のことを言っているのだ。ふんと鼻を鳴らしてメタナイトが剣を鞘に納める様子を目にルーティは感心の声を上げてしまいそうになる。……あの不思議な形状の刀身を持つ"ギャラクシア"と呼ばれる宝剣がどうやってその形状に合わせて作られたわけでもない細長いだけの鞘に納まっているものかと思ったけど。納める瞬間に刀身が透過するんだ。
それに──剣を抜いている時、僕の使う電撃と同じように刀身に閃光が走っていた。流石は剣を扱う四人の若き戦士の稽古を付けているその人。素人目に見ても特別な剣を澄まし顔で握ることが出来るのもその腕を剣に認められているからなんだろう。
……そんなこと言ったら剣士の皆さんの持っている剣なんて伝説揃いだけど! 脳がバグる!
「いや」
脳内で騒ぎ立てている間にメタナイトはカービィの発言に冷静に返答する。
「あれは間違いなく殺すつもりだった」
ですよね!
「ふぅん」
剣士でも何でもないにも関わらずカービィが早朝からこの場に居合わせているのも簡単な話、彼がメタナイトのパートナー且つピットと同じ理由から目を覚ましてしまうからで。
「物騒だねぇ」
話の内容は決して穏やかではないというのに。カービィは薄ら笑いを浮かべながら。
「ま、どっちでもいーけど」
それはいったいどういう感情なんだ……
「痛っ」
ルーティはそれまでピットに握られていた手を思わず引っ込める。「ごめん!」と謝るピットにそうじゃないよと片手を軽く挙げて断りを入れたところで改めて手のひらを見てみれば案の定傷だらけ。
「あらら。切れてるじゃん」
ひょいと後ろからカービィが覗き込む。
「天使って治癒魔法とか使えないの?」
「ボクそれ専門外だから」
「光魔法とか白魔法とか使えるもんだと思ってた」
ピットは思わず吹き出してしまいながら。
「それはゲームの中の話だよ」