第一章
……睫毛、長いな。眼帯してることにばかり注目してたけど右目は狼の目そのもので真紅に浮かぶ黒の瞳孔は思うよりまん丸としている。そこに愛嬌を感じられるかといえばその他の情報が強面過ぎて掻き消されてしまうわけだが──
「何だ」
「へ」
此方を向いていないからってすっかり油断してしまっていた。こうも火よりも熱い視線を注ぎ続けていれば余程の天然でもない限りは視線に気付き、あまつさえ指摘してくるってことは少し考えれば分かることなのに──素っ頓狂な声を上げたルーティは苦笑いを浮かべて取り繕った。それでも相手は此方に目を向けてくれないのだから距離を感じる。
「えっと」
ルーティは後ろ手を組みながら。
「僕……口で言うよりも体が先に動くタイプで……お人好しすぎるって友達に突っ込まれるくらい相手の人を疑わないで助けようとする……癖? みたいなのがあるんだけど」
……ウルフは黙っている。
「その」
静聴されているみたいで何だか気恥ずかしい。
「これから──よろしくねっ」
ピクッと狼の耳が反応を示して。
ほんの一瞬。視線が此方を向いたような気がした。
「そうだ」
ルーティは思い出したように。
「情報共有とか必要かなと思って」
空を仰ぎ。
今日あった出来事を頭の中で整理しながら。
「パートナーなんだし」
ここでもウルフの狼の耳が小さく反応を示したのを目を離していたルーティは気付かない。
「まず、ダークシャドウのことなんだけどさ──」
幾ら鈍感に磨きが掛かっている自分でも。
舌打ちの音だけは聞き逃さなかった。
「ウゼェんだよ。鼠」
じろりと見下す鋭い眼と低く唸るような声に。
「黙って聞いてりゃ頭ン中に花咲かせたようなへらへらした面で呑気に喋りやがって」
言葉を発せられるはずもなく。
「いいか」
ウルフは足を止めると改めて睨み付けた。
「テメェと俺様がパートナーなのは上の連中が勝手に決めてきたことだ。それ以上でも何でもない」
まるで猫の前の鼠かのように硬直するルーティを目にふんと鼻を鳴らした後でウルフは背中を向けると歩き出しながら。
「……分かったら気安く話しかけるな」