第一章



糸が切れたように。ハッと我に返ったが直後突き動かされるようにして表の通りに飛び出したがそこに先程の少年たちの姿はなかった。見つけたところでどうなんだという話ではあるが何となくその背が遠ざかっていくのをこの目で見守りたかったのだ。

シャワーのように浴びせられる喧騒の中でルーティは呆然と立ち尽くす。一時間や二時間、或いはもっと長い時間あの路地裏でやり取りをしていたような気さえするのに一番見失ってはいけない仲間たちの背中を見つけられたのは幸運と言うべきか。


何だか。

狐につままれたような時間だったな──


「ルーティ!」

情緒もへったくれもない──なんて言うのは西の国で若くして戦場を駆け、封印の剣を携えて活躍したともされる若獅子に向けるのは酷だろうか。

「お前っ、お前さぁっ」

それでもまあ勝手に抜け出した挙げ句感傷に浸っていたのはこっちの都合且つ責任ですし。

「本当にアイツの」

と言ったところで引き剥がされるまでがお約束。

「ハイハイ。そこまで」
「まったく君という人は」

意外だと感じたのは飛び付いてきた若獅子の二つ名を持つ赤髪の青年ロイを宥めたのがカービィともう一人、英雄王の二つ名を持つ一国の王子たる青髪の青年マルスだったという点。引かれた線を跨いだ仲と見て取れるこの三人はそんなにも飛行機の中で話の馬があったということだろうか。羨ましい。

「いやだって、──あだぁッ!?」

何を言いかけたのか知らないが発言を遮るようにしてロイの頭の上に振り下ろされたのは、表面の星の模様が特徴的な一見してポップなデザインに落とし込まれた木槌だった。大きさにして一メートルまでいかないくらいといえそんなもので叩かれたら痛いどころの騒ぎではないような。

「何すんだよ!?」
「余計なこと話そうとするからでしょ」
「……通行人が見てるよ」

そこはまあギャグシーンという処理が為されたのか出血こそしているものの命に別状はないようで。あはは、とルーティはぎこちなく笑ってみせながら少し先を歩くウルフを見つけると聞こえてはいないであろう断りを入れながらその場から退散する。

「ウルフっ!」

といった具合に駆け付けてきたルーティが隣に並ぶもズボンのポケットに手を突っ込みながら歩くその人は一切視線を寄越さなかった。

「おい」

かと思えば。

「何をしていた」

ちっとも気に掛けていないわけでもないようで。

「落とし物を拾ったから届けにいったんだよ」

疾しいことは何ひとつない。確かにあの時会ったあの人は思わず目を奪われるような惹きつけられる何かがあったけど説明するほどでも。ルーティの返答にウルフは暫く黙っていたがそれ以上でもそれ以下でもないと判断したのか短く息を吐き出しながら。

「……そうか」
 
 
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