第一章



特殊防衛部隊──『X部隊』。

この宇宙に浮かぶ惑星フレイアムの拠点とも言えよう、厚い雲を突き抜けた遥か先にぽつりと浮かぶ天空大都市レイアーゼを守る為だけに結成された至極特別で有数の戦士だけが集められた組織。

戦士を目指す者なら誰もが羨む。ルーティも幼い頃から見ていたヒーローアニメや漫画、特撮テレビによる影響にあてられて強い憧れを抱いていた。

そんな中。数ヶ月前、ルーティは優勝すればX部隊に入隊できる権利を与えられるという公式のバトルトーナメントに出場して見事優勝を飾り権利を勝ち取ったのだ。そうしてあっという間に月日は過ぎて今日この日はX部隊に入隊したメンバーと顔合わせをするとても大切な日──遅刻だなんてくだらない理由で悪い印象が根付いてしまっては笑えない。


僕は。

この世界を守る立派な戦士になるんだから!


「心配性だなぁ」

とはいえ。

「大丈夫だって」

ルーティは先程抱き止めてくれたリムの手を借りて立ち上がりながら眉尻を下げて見つめるルピリアに苦笑気味に答える。そりゃまあいくら理由を並べたところで齢十六の息子が戦士として突然旅立つなんてこれ以上にないくらい寿命が縮む事態だろうけど──それにしたってもう子どもじゃないわけだし。

「でもねぇ」

今日という日が近付くにつれてこのやり取りも定番になりつつあった。親にとって自分の子どもはいつまで経っても子どもなんて言うが。

「そうですよ」

困り顔のルーティの横でリムが口を開く。

「私たちが居ますから」


……?


「僕も僕もっ!」

ぴょんと跳ねてピチカが手を挙げる。

「お父さんに稽古つけてもらったんだから!」

ルピリアは目を丸くした。

「あのクレシ、……お父さんに?」
「はい! だからおにぃのことも守ります!」
「これは頼もしいわね」

胸を張るピチカにリムは失笑。

「……そういえば」

思い出したように。

「ルーティ。パートナーさんは?」


あ。


「ああぁああああっ!?」

パートナーについては追って説明しよう。

「待ち合わせしてるんだった!」
「ええー!?」

青ざめるルーティにピチカは釣られて声を上げる。

「おにぃやばいよ飛行機出ちゃうよ!?」

顔が引き攣る。

「行ってくる!」
 
 
3/33ページ
スキ