第一章
俺の名前はダークピカチュウ──
「っ……」
スピカが行方不明になってから十年も経つ。辛い話にはなるけど今も生きているなんて保証はないし同じピカチュウだったからつい面影を重ねてしまったというだけで彼らダークシャドウの特性を鑑みればあの少年がスピカなんて確証はますます持てない。
でも。何だろう。
あの子は他のダークシャドウと違って、声も姿形も僕に似てないような気が──
「何もないなら」
「、はいっ!」
話を切り上げようとする声に意識を引き戻されたルーティは慌ただしく挙手をした。驚いたようにぱちぱちと瞬きを繰り返すフォックスに構わず、
「えと」
ルーティは当時のやり取りを思い出しながら。
「ダークシャドウの一人が話の中でマスター様とクレイジー様がどうとかって言ってたんだ。だから、ダークシャドウは……例えば大きな組織に属している集団であってマスターとクレイジーって人は……その親玉なんじゃないかな、とか……」
しん、と。
辺りが静まり返ったような気がして。
「フォックス?」
僕からしてみればただの憶測に過ぎない意見だったけど──もしかして皆にとってはいわゆる周知の事実で当たり前のことを得意げに推理した気になって滑稽だなとか思われたんじゃ。
「あ、ああ」
そうして不自然な間を空けた後のフォックスによる第一声は何処か上擦ったように聞こえた。
「貴重な意見をありがとう」
随所で耳打ちをする声や視線が痛い。
「えっと」
それ自体はフォックスも気付いていたのだろう場の空気を取り持つように苦笑いを浮かべながら。
「そろそろ移動しようか」