第一章



ただ黄金色の髪ってだけではない。両サイドのもみあげに限っては毛先が黒いのが特徴的で頭頂部にはくるんと巻いた一本のアホ毛。まん丸とした黒色の瞳は小動物のようだが彼の種族を思えばあながち間違いでもない、彼は人型でありながられっきとしたポケモンでありかの有名な電気鼠のピカチュウなのだ。

「うわっ!」

さて物語を綴るからには彼の正体についてもう少し詰めなければ。これまた勢いよく部屋を飛び出し階段を駆け降りようとしたが踏み外したところ申し訳ないが紹介させていただこう。

「わあぁああっ!?」


実はこの開幕から落ち着きのない少年こそ、今回の物語の主人公のルーティ・フォンなのである。


「おにぃ!?」

事故を目の当たりにした少女は思わず声を上げる。

「っ、」

……痛くない。

「んもぅ」

もう一人の少女は眉尻を下げながら。

「気をつけなさい……」


先程ルーティのことを咄嗟に"おにぃ"と呼んだ少女の名前はピチカ・リー。黄檗きはだの色の髪は高い位置でツインテールにして括っておりどのように結んでも何故か毛先は黒色に染まる。ルーティを実の兄のように慕っているこの少女もまたポケモンで種族はピチュー。お馴染みピカチュウの進化前である。

もう一人の先程階段を滑り落ちてきたルーティを既の所で抱き止めた少女はリム・ライトネル。ウェーブがかかった桃色の髪が何より特徴でサイドや後ろ髪を残しながら一部をポニーテールにして括り、仕上げに赤いリボンで留めている。お察しの通り此方の少女もポケモンであり種族はプリンなのだ。


「おにぃってば、心臓に悪いよぉぉ……」

胸を押さえたピチカは胸を今にも崩れ落ちそうで。

「あ、あはは──」
「こらっ!」

お咎めは覚悟の上だったが。

「前以て準備しておかないからこうなる!」

キッチンから飛び出してきたのであろうエプロン姿の母親のルピリアに叱られてルーティは苦笑い。

「だからドタバタ騒がしかったのね」
「はやく寝ないから起きられないんだよ!?」

耳が痛い!

「……まったく」

ルピリアは溜め息を吐き出す。

「こんなことで上手くやっていけるのかしらねぇ。うちのお馬鹿さんは」
 
 
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