第一章
ルーティは思わず息を呑んだ。荒く転じた呼吸を鎮めようと奥歯を噛み締める彼からは異様なまでの執着が感じ取れる。偽の影だとは話していたが本物のウルフとは似ても似つかないな……偽のフォックスもそうだし能力はともかくその性格に関しては本物と似ていないどころか真逆なのかもしれない。
それよりも。
リーダーということは。
彼が。ダークシャドウのトップを?……
「、……いい」
症状が多少落ち着いたのか少年は頭を擡げる。
「っリーダー!」
「騒ぐな……」
とはいえ未だ芳しくない様子で。
「俺たちはダークシャドウ……影虫で作られたこの体は陽の光に弱い……」
口元にぎこちない笑みを浮かべながら。
「今回だって陽の光に当たりすぎただけ……」
そうだろ? と。
彼を安心させようとするかのように。
「、……はい」
偽のウルフは操縦桿を固く握り締めながら。
「リーダーの言う通りです。……すみません……」
先程のルーティの行動は戦況を大きく変えたようでダークシャドウの操縦する機体はそれぞれがまるで銃口を突き付けられたかのように背後を取られ制止を余儀なくされているようだった。肝心の飛行機も中の様子こそ窺えないが先程よりも黒い靄は晴れて速度を落としながら何食わぬ顔で飛行している。
「なぁに後ろ取られてんだよ。だっさぁ」
「貴方が不意を突かれるからですよ」
そんな一聞して不仲と取れるやり取りが偽のウルフのコックピット内の無線を通じて聞こえてきて。
「テメェら! 静かにしやがれ!」
……リーダーと慕う少年とそれ以外とではこれまた随分と態度が違うものである。
「ウルフ」
「はい」
「どのくらい経った?」
「……三十分くらいですね」
そうか、と。
少年は目を細めながら呟いた後で。
「……時間だな」
そんな風に話して静かに視線を向けるものだからルーティは思わず腰が引けた。警戒して身構えていれば少年は続け様正面に視線を投げ掛けて。釣られてそちらを見ればいつの間にか正面にはウルフの乗ったウルフェンが接近しており何を仕掛けるでもなくじっと制止して様子を窺っている。
「交換条件だ」
少年は口を開く。
「まずはそこの二人を解放しろ」