第一章
突然、機体が大きく揺られるとフォックスに対応する影たる偽のフォックスは「うぇっ!?」と素っ頓狂な声を上げた後反動で室内に頭をぶつけた。お陰様で大きく軌道は逸れたものの二、三度頭を摩った後に改めて操縦桿を握り、眉間に皺を寄せながらも頭を上げれば。
「っい!?」
偽のフォックスが声を上げるのも無理もない──なんと正面コックピットを外側からルーティが逆さになりながら覗き込んでいたのである。
「こ、こんにちは!」
「っじゃねーし!」
至極真っ当な意見を返して偽のフォックスは振り落とすべく操縦桿を乱雑に動かし機体を揺さぶる。右へ左へ急旋回させながら機体を傾けるがルーティはしがみついたまま離れない。
「いい加減に──」
苛立ちの声を遮るように電気の擦れる音。
「、へ」
冷や汗を垂れても後の祭り。
「──喰らえ!」
呼び寄せた暗雲のひと塊が唸り声を上げた後。
雷鳴を轟かせて天罰を下す。
「いぎゃあああぁああッ!」
雷を落とされた偽のフォックスは悲痛な叫び声を空に響かせた。それでも尚操縦桿は手放さず最後の足掻きとばかりに機体を揺さぶり回転させれば。
「ぁ」
手足が滑って弾かれる。
「ルーティ!」
真っ逆さま。
「、!」
走馬灯が訪れるよりも早く落下は阻止された。正直反動で肩が外れてしまうものかとも思ったが命に比べてみれば大したことでは──ルーティは反射的に瞑ってしまっていた瞼をそっと開いて顔を上げる。
「ッ……」
そこにいたのは──仮面の少年。
「リーダー!」
ウルフェンを操縦する偽のウルフが声を上げた。
「何故そいつを!」
「……知るか」
「手を離してください!」
「うるさ、」
機体が揺られて。
「!」
顔面を覆っていた仮面が外れて落ちる。
「……え」
脳裏を巡ったのは走馬灯ではなく。
懐かしい昔の記憶。
「な、んで」
ルーティは困惑に瞳を揺らしながら。
「……スピカ……!?」