第一章
ウルフはパネルを手早く操作すると操縦桿を切って航路を逸れながらUターンをした。それと同時に敵もチャージ弾を放ったが無論その攻撃を見越しての行動だったのだろう──結果として反応の遅れた敵の真横をすれ違うような形となりルーティは初めて敵の全貌を目の当たりにする。
「ウルフェン……!?」
思いもよらない機影の正体にルーティは大きく目を開きながら思わず声に出して言った。
「!」
そしてその機体の左翼の上には一人の少年の姿。自分と然程歳は変わらないであろう風貌で顔面を覆うように仮面を付けている。さっきの攻撃──何処か似ているなとは思っていたけど確信が持てた。彼は僕と同じ、ポケモンのピカチュウだ!
「──来るぞ!」
ウルフの予告通り敵のウルフェンは素早く旋回すると引き続き後を追ってきた。連続して放った電撃はことごとく躱されて二機は半径五メートル程の間を開けて並走するような形となる。
「君たちは誰っ!?」
顔を顰めながら声を上げるルーティに。
「俺たちは『ダークシャドウ』……」
少年は答える。
「対X部隊用に造られたお前たちの偽の影」
「偽の……影……!?」
……つまり。
あのウルフェンを操縦しているのは──
「無駄な抵抗はやめろ」
その声はコックピットの中から聞こえてきた。硝子越しに見えたのは浮かび上がったウィンドウに映し出されたウルフとよく似た男の姿。
「さもなくば早々に解散することになる」
「……!」
航路をUターンしたことでこの事態の全貌も明らかとなる。青の小型戦闘機を追う同じ機体と黒い
「どうしてこんなことをっ!」
ルーティは体の内側から怒りが込み上げてくるのが分かった。
「何が目的なんだ!」
少年は黒手袋を装着した手に火花にも似た音を立てて黒の閃光を滾らせながらまるで機械を通したかのような妙にこもった淡々とした声音で。
「我らが主、マスター様とクレイジー様の命令だ。恨むなら己の不運を恨むんだな」