第一章



構える?……こんな不安定な足場の上で?

ルーティは口の中が乾いていくのを覚えた。ただの移動だろうと解けていた緊張が状況が転じたことでみるみる内に造形を取り戻し体を締め上げていく。

「チッ」

すぐには動けないでいるルーティに痺れを切らしたウルフは舌を打った。右、左と順に旋回することでレーザーを躱してくれているがどれだけ速度を上げて引き離そうとしても同じ速度で追尾してくる以上回り込む手段及び対抗策がない。

「早くしろ!」

迫り来る敵の次の攻撃は都合よくスローモーションになって視界に映り込んだ。

「ルーティ!」


走馬灯のように。

エアポートから飛び立った時の出来事が甦る。


そうだ──あの時この人はみっともなく羽にしがみつく僕を落とさないように飛行してくれた。今だって機体を宙返りさせれば相手の後ろを取るのは容易なのに強行しないのは羽に乗せた僕を案じてくれているからなんじゃないか。

不慣れな僕を機体から落とさないように──


「……分かった」

ルーティはゆっくりと立ち上がる。風の煽りは避けようのない障害だが考えを改めた今では足場が酷く安定しているかのような錯覚さえしてくる。

「信じるよ」

体の表面に青の閃光を跳ねながら。

「だから」

目の色を変えて目前にまで攻撃を見据える。

「落とさないでね。……ウルフ」


この人は。

僕のパートナーなんだ!


「!」

両手を突き出し、手のひらの先から放出した電撃で敵の攻撃を相殺する。次の攻撃もその次の攻撃も。

「やるじゃねぇか」

そんな声に密かに心が躍った。

「このまま行くぞ!」
「……うん!」
 
 
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