第一章
突如として現れた謎の敵『ダークシャドウ』。そんな緊急を要する事態などつゆ知らず航路の先を飛ぶルーティ達は他愛のない話に花を咲かせていた。
「この乗り物、ウルフェンっていうんですね」
名付けたのは本人だろうか。
「おい」
機体の羽の表面を撫でながらそんなことを話していたルーティは苛立った声で呼び掛けられ、大袈裟に肩を跳ねながら「は、はいっ!」と返事をする。
「敬語を使うな」
自分の名前がウルフだから愛機の名前がウルフェンなんて安直だなぁなどと失礼な考えを見透かされて突っ込まれるのかと思いきや。いつまでも敬語を使って接する自分に感じたのは嫌気か壁か──なんだそんなことかとルーティは小さく笑みを零す。
「……でも、先に行き過ぎちゃったかな」
誰よりも早くエアポートから飛び立ったのだから距離が開いてしまうのは致し方ない話。振り返ったルーティが眉尻を下げながら呟くものだからウルフも何気なく視線を落としたのだ。せめて相手方のレーダーにおさまる範囲にまで速度を落としてやろうと気まぐれに思い立ってのことだったのだが。
「うわっ!?」
──事態は急展開を迎える。
「なななっ何何何!?」
合図も何もない急旋回にルーティはコックピットにしがみつくような形となる。ぐんぐんと振り回される最中固く瞼を瞑っていたが目を開けろとばかりに硝子を叩かれればハッと瞼を開いて。
「敵だ! 仕掛けてきやがった!」
敵ってことは。
僕たちが戦わなければいけない相手で。
「後ろだ!」
ウルフの指示にルーティは我に返る。振り返れば確かに何やら黒い機影が此方に迫ってきていた。危険を察知したのだろうウルフが操縦桿を切ればまたしても急旋回する形となったがレーザーによる攻撃を回避することに成功する。
「──ぼさっとするんじゃねえ!」
冷や汗を垂れながら緊急事態に体を強張らせるルーティを横目にウルフは声を荒げた。
「テメェも構えろ!」