第一章
──X部隊専用輸送機、及び飛行機内部。
「動くな」
喉元に剣先を突き付けられた緑の装いの青年は影を前に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「久しぶりですね」
「ああ。久しいな」
「これは一体どういう状況ですか」
緑の装いの青年の隣に座っていた似た装いの少年は危機的状況にあるにも関わらず椅子に体を沈めて呑気に寝息を立てている。移動に時間が掛かることを見越して初めから眠っていたわけではない──突如として襲った睡魔に抗えず眠りに落ちていたのだ。
「おっと。大人しくしていろよ?」
睡魔は程なく緑の装いの青年に対しても情け容赦なく牙を剥く。周囲同様抗うべくアームレストにしがみつきながら意識を保とうとするも、青年の意思に反して視界は暗く歪んでいく。
「俺らは挨拶に来たんだ」
「……誰の……命令、……ですか」
声が遠退く。
「テメェらもよく知ってる連中だよ。くくっ……」
場面は変わって、上空。
「お前、は」
フォックスは恐怖と困惑の入り混じった表情を浮かべながら震えた声で訊ねる。自分によく似た姿形をしたその相手は途端に声を上げて笑うと前髪を掻き上げてより一層不気味な笑みを浮かべながら。
「おにーさんビビりすぎ!」
刹那、頭の先から糸が解けるように──或いは塗装が剥がれ落ちるようにして元あった色が正しい色に変じて真の姿を現した。それは相変わらず自分の姿と形は変わらないが髪の色が焦茶だったり肌の色が褐色だったり見分けのつく変化をもたらしている。
「こっちのが安心?」
「……それが……真の姿か?」
「まーね。でも俺アンタの偽物だから」
双眸の紅を三日月に歪めながら。
「"俺も"フォックス・マクラウドなんスよ」
頭が。
理解を拒んでいる。
「ファルコ」
「ああ」
その頃パートナーも表情を歪めていた。
「ようやくお出ましだぜ」
引き攣った顔の答え合わせをするかのように自分の偽物を映し出したウィンドウの横にもう一つウィンドウが割り込み一人の男の姿が映し出される。
「大成功ですね」
その男もまたパートナーによく似ていた。
「お前達は、一体何者なんだ」
操縦桿を強く握り締めながら冷静に激情してはならないと自分を律しながら──フォックスが訊ねるとその人は耳に響く笑い声を上げた後で。
「俺達は『ダークシャドウ』。対X部隊用に精巧に造られた、本物以上の偽物っスよ」