第一章
再び、沈黙が流れた。けれどその沈黙は気まずいようなものでは決してなくそれぞれが未だ鮮明に思い出される景色に想いを馳せていて。
「そうかよ」
ファルコが言うとフォックスは笑みを溢した。そうして何気なく操縦パネルを操作する過程でその隣に設置されたレーダーに視線を落とす。
レーダーには反応が四つ。自分達の操縦している青の小型戦闘機アーウィン二機と前方を飛行するウルフの操縦する赤の小型戦闘機ウルフェン……そしてX部隊メンバーを乗せた飛行機と計四機のものだ。そもそもの話、今日特殊防衛部隊X部隊が結成されるという話は表立っていない。飛行ルートはもちろん到着した先でも情報過敏な物好きに付き纏われて揉まれることは決してないだろう。……
「ん?」
フォックスは怪訝そうな声を出した。
「どうした?」
レーダーに三つの反応が"突然"現れたのだ。
「いや」
この機体の整備を請け負っている天才メカニックの手掛けたレーダーが精巧でないはずがない。反応を拾うのに遅れが生じるなんてことが有り得るのか?
「反応が──」
次の瞬間だった。
「フォックス!」
ただならぬ気配を察知したファルコが咄嗟に声を上げるのとフォックスが操縦桿を切り、機体を急旋回させたのはほぼ同時だった。結果としてフォックスの操縦するアーウィンはレーザーによる攻撃を全弾躱すこととなったが振り返って確認しようにも攻撃が止まない関係で思うようにいかない。
「ファルコ!」
やむを得ずパートナーの現状を確認しようと視線を走らせたが見つけた矢先その後ろを追尾する機体にぎょっとして声を漏らす。
「アーウィン……!?」
故郷に置いてきたチームのメンバーか!?
いや。そんな話は聞いていない!
「冗談じゃねぇ! 何だってこんな時に──」
「こんな時だからですよ」
ノイズ混じりの無線が入る。
「けっけっけ……」
「誰だ!」
フォックスが噛み付く勢いで声を上げるとそれまでファルコの様子を映し出していたウィンドウの隣にまた新たなウィンドウが浮かび上がった。不気味な笑い声と共に砂嵐を走らせていたそれは程なくしてカメラの映像を映し出す。
「あれあれぇ?」
声の正体にフォックスは言葉を失う。
「見覚えなしとかナイっしょ」
それはあまりにも。
他でもない自分によく似た顔で。よく似た声で。
「毎日見てんだからさぁ」
全く似合わない悪辣な笑みを浮かべる。
「けけけけけけ……」