第一章
「あ」
注がれる視線に嫌気が刺したのか否か強面の男が歩き出したのを見てルーティはそれまで抱き付いたままの姿勢だったピチカをそっと離すと三人にも断りを入れてその後を追いかけた。ピチカは暫し呆気に取られていたが我に返ると両手を振り上げながら。
「こらぁ! 飛行機はぁ!?」
「まーまー急いじゃいないんだしいーじゃないか」
ローナはピチカの肩をぽんと叩く。
「ありゃ捕食対象だな」
頭の後ろを掻きながら、ネロ。
「……どうした?」
押し黙ったままのシフォンに気付いて振り返る。
「見られているわね」
視線の先には羅列した飛行機の窓。
「そんなに人の形したポケモンが珍しいかね」
気怠そうにぼやくネロの横でシフォンは走り去っていくルーティの背中に視線を移しながら。
「……そうかもね」
強面の男が向かったのは滑走路を避けて停められた赤い小型戦闘機の所だった。恐らくはリモコンの役割を果たしているのであろう左手首に装着した腕輪を操作するとコックピットの窓が開いて。強面の男は周囲の様子など目もくれず早々に乗り込む。
「あの」
ルーティは恐る恐る訊ねる。
「その飛行機で……行くんですか?」
ひと悶着あったとはいえ自分のパートナーだ。そして何よりこれは野生の勘でしかないがこの人は根っからの悪人ではないような気がして。
「見りゃ分かるだろ」
強面の男は無愛想に返した。
「そ、ですよね」
会話終了。
「じっじゃあまたあとで」
「ウィングに乗れ」
え?
「……えっと」
ウィングってこの羽のことだよね?
「さっさとしろ」
強面の男は淡々と発進の準備を進めながら。
「置いていくぞ」