黒炎の絆



このご時世で外出は憚られると思うんだが──

少し頼まれてくれないか?……


──天空大都市レイアーゼ。市街地。


「おおおおっ!」

歓喜の声を上げる小太りの男性が視線を注ぐ先には支障なく稼働するエレベーター。蹴っても叩いても業者を呼んでも沈黙を貫いていたそれが息を吹き返したのはその正面に立つ少年ルーティが得意の電気技で枯渇していた電力を復活させたからである。

世間を騒がせている暴走メガシンカの一件が落ち着くまで外出基活動を縮小しているはずの彼が何故市街地にまで繰り出して困り事の解決に協力しているのか──というのは前日の夜にフォックスにお願いされたからに他ならない。通りすがりで見かけた程度だったがどうにも捨て置けず、放っとけと咎めるパートナーを無視して言い伝えたのだと。


明日、電気に関して心強い人を向かわせます!

待っていてください!……


「流石は、英雄の息子さんだ!」
「あ、あはは」

光と闇が全世界を巻き込んだ壮絶な戦いを明けたその日から何故やらそう呼ばれることが増えたがそれがどうにも擽ったい。どちらの神様の仕業か分からないがこれは意地悪なのか否か。

「本当はすぐにでも依頼したかったんだがね」

小太りの男性は腕を組む。

「君らのページが閉じられていたから……」
「あはは、はは」

無論これは余計且つ理不尽な苦情を受けないように対処した結果である。ネット上で常設されている個人に依頼できるページは抜かりなく種族がポケモンであるメンバーに限り閉じられているのだ。

「そ、そっちもすぐに直りますよ」

ルーティは苦笑を浮かべながら言った。

「依頼料はいくらだい?」
「ええっ! 勝手に来ただけですから!」
「いやいやいや……」


良い人でよかったのか否か──断りを入れたが押し切れず依頼料と称してお金まで頂いてしまった。いつもならこのまま街をぶらついてみようなんて気にもなるのだが前述の通りこのご時世だし。今の街の様子は気になるけどこのまま真っ直ぐ帰ろうかなとうんうん唸りながらビルの前で悩んでいたその時。

「おっやおやぁ?」

この声は。

「ルーティ君じゃないかぁ!」

目を丸くして振り返れば。

「やっほー!」
「よう」
「偶然ね」

先行する三人に続けて少年が微笑む。

「こんにちは。ルーティ」
 
 
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