黒炎の絆



ルーティはぎくりとした。

「現場は一時騒然としましたが通りすがりの男性による通報を受けて駆け付けた警察官により」

不自然なタイミングでチャンネルが切り替わる。

「……リム?」

ピチカは怪訝そうに視線を上げた。

「夜更かしはお肌の大敵よ」
「え、でも」
「今日はもう寝なさ」
「避けるような話題かなぁ」

チャンネルを変えたのはたまたまリビングに居合わせていたリムだった。気を取られるピチカの手からリモコンを咄嗟に取り上げたのである。

「処分されたって出てるよ。ネットニュースで」

せっかくの配慮もご覧の有り様。ぼやいたローナが携帯端末でさっと調べた様子で画面を見せ付ける。

「……処分されちゃったんだ」
「トレーナー居ないんじゃ妥当な判断じゃない?」

案の定、事の結末を知って声のトーンを落とすピチカに反してローナはあっけらかんと事態をそれほど気に留めていない様子。

「自分勝手だよね」

かと思えば。

「共生だか何だかでホイホイ受け入れておいて天秤に掛けられたら咄嗟に守るのは人間の方なんだ」

……そうでもないらしい。

「鎮静剤でも打つとかしてやりようはあったんじゃないかなー」


暴走メガシンカ。昨今増えている謎の現象。

本来、少し面倒なくらいの条件を揃えない限りメガシンカは出来ないはずなのだがこの暴走メガシンカと呼ばれる現象は対象のポケモンが野生種であるにも関わらず発現する。当然原因解明までには至っておらずここ数週間はその話題で持ち切りだ。


「、……」

影響を受けていないはずもない。X部隊にはメガシンカが出来る出来ないに関わらず種族がポケモンであるメンバーが全部で八人もいる。変な苦情までは突き付けられていないが念には念をということで、上記のメンバーに関しては一件がある程度落ち着くまでを目安に外出基活動を縮小しているのだ。

「ローナ」

鶴の一声というものは斯くも有り難いもので同じくこの場に居合わせていたレッドが声を掛けると陰りを落としていた彼女の肩が小さく反応を示した。

「部屋に戻ろう」

暫しの沈黙をおいて。

「はぁい!」

ローナは無邪気な笑顔で振り返る。

「じゃあねぇピチカ!」

雲泥たるテンションの差だ。

「う、うん」
「また明日ぁ!」
「ま……また、明日……」

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