黒炎の絆
頬に青の閃光を迸らせ、強く地面を踏み込んだが直後目にも留まらぬ速度で目前へと迫る。これで討ち取れるものとも思っていなかったが電気を纏いながら繰り出した蹴りをその場に踏み堪えながら背中を大きく反らせて躱されるものとは思わなかった。そうした低い姿勢から身を起こして切り返しに掛かるのも早くルーティは思わず息を呑んで覚悟を決めたが機転を利かせたルルトの側面からの飛び蹴りにより難を逃れる結果となる。それでダメージを与えられたかといえば──直撃を受けたはずのミカゲは次の瞬間には白い煙に巻かれ丸太を身代わりに置いて姿を掻き消してしまっていたわけだが。
「ありがとう、ルルト!」
ルーティは足を揃えて構え直す。
「……ルルト?」
「ミカゲは」
表情に影を落として。
「誰よりも繊細で優しい子だわ」
静かに拳を握り締めながら。
「暗殺の依頼の中には隊員の名前が記されたものもあったそうよ。けれどそれがどれだけ正当な理由であれ多額の報酬であれ仲間を裏切るような真似だけは一切しなかった。……そういう子なの」
やがて降り立つ影を眉を顰めて見遣る。
「絶対に。こんなことだけはしない子なのよ」
気持ちが分からないはずもない。リオンだってユウだってどれだけ意見が食い違っても納得がいかなくても仲間に手を出すようなことはしなかった。力の差が歴然でも、それを使って捩じ伏せるような真似だけは決してしなかった。
「私。今度の犯人だけは生かしておけないわ」
「僕も同じ気持ちだよ」
ルーティは肩を並べて拳を握る。
「絶対に勝とう!」
「……ええ!」
土埃が舞い上がる。
「くっ」
拳こそ躱したがそれだけが目的ではない。叩き割られた地面が抉れて捲れ上がれば一帯が歪んだ。いくら体幹が鍛えられていたところで多少なりともぐらついてしまう。その様子が土埃によって妨げられていたとて頭で考えてしまったら最後。
「……!」
彼の目からは逃れられない──!
「ぬぅ……ッ!」
呻く声に土埃の外側に居たリムは冷や汗を垂れる。
「……ラッシュ!」
リオンは確かに普段から此方が動くよりも先に攻撃を繰り出せるだけの能力と実力を兼ね備えていたけれど今のこの暴走メガシンカ状態の彼は普段以上の動きを見せている。加えて、いつも大乱闘で見るようなメガシンカの形態じゃない。そのお陰か動きも俊敏でとてもじゃないけどまともに戦えない!
「っ……」
土埃の中で音だけが聞こえてくる。攻撃を相殺したのか防御で凌いだのかはたまた回避したのか。判別も付かない中で飛び込んでいくのは死に急いでいるのと同義だ。かといって、どうすれば。
「──リム!」
レッドの声にハッと顔を上げる。
「チャームボイス!」