黒炎の絆
動き出しの遅れたレッドを傍目にシフォンがすかさず蔓の鞭を振るって足首に絡み付かせ、腕を引いて転倒を誘う。全く予想だにしていなかったレッドは「うわぁっ!?」と声を上げて尻餅を付いたが結果として次の瞬間には放たれていた赤紫色の光線を躱すことに成功した。ほんの少し掠めた帽子が跳ね飛ばされて地面に投げ出されながら焦げ付いた匂いを纏うのを目にレッドは冷や汗を垂れる。……当たればポケモンを無理矢理メガシンカさせて暴走させるエネルギー。ただの人間である自分が当たっていればどうなっていたのだろう──いや。考えている暇はない。碌なことにならないのは目に見えている。
「ルーティとルルトはミカゲを!」
レッドは急ぎ、立ち上がってから指示を出す。
「麻痺を狙うんだ!」
指示を受けた二人は頷いて駆け出した。
「リムとラッシュはリオンを!」
「やれるだけやってみるけど……二人がかりだって止められるような相手じゃないわよ!」
「止められなくたっていいんだ!」
レッドは更に声を上げる。
「他の皆に被弾しないように立ち回ってくれ!」
「分かったわ!」
「おうよ!」
「僕たちは!?」
ローナが指示を仰ぐと。
「ピチカとローナとシフォンの三人はユウを!」
「うえぇっ!? 空飛び回ってるのに!?」
「僕たち三人とも飛べないよ!?」
レッドは顔を顰めて空を見上げる。確かにユウに限っては他二人と違って常に上空を浮遊しておりその上で動き回るので簡単には仕留められそうもない。
「ローナはさっきの要領で水鉄砲を当ててくれ」
──それでも。
「ピチカ。雷は使えるよね?」
「う、うん」
「二人で合わせるんだ」
そこでようやく合点がいったのかピチカは頷く。
「ローナ!」
「がってんだ!」
「シフォンは二人のサポートを!」
「貴方はどうするの?」
上手く割り振ったまではいいが非戦闘員である彼を一人にさせるわけにはいかない。
「スピカは……怪我してるんだよね?」
「!、……ああ」
不意に話を振られたスピカは身構えたが。
「側に居てくれるかな」
微笑みかけるレッドに目を丸くする。
「頼りにさせてほしい」
「……分かった」
スピカが承諾したのを確認してレッドは振り返る。
「君たちは──」
「死体処理は任せてくれ」
「その言い方だと語弊があるんスけどぉ」
「お任せください」
何を言うより早く理解してくれたようでダークウルフ達は各々の銃の装填をして死体と思しき人間らの処理に向かった。レッドは深く長く息を吐き出す。
「よし」
拾い上げた帽子を被り直して。
鍔を持って鋭く見据えた先には男の姿。
「絶対に──お前の思い通りにはさせない!」