黒炎の絆



現れたのは──ルフレだった。

その傍らには彼女の双子の兄であるマークの姿もあり此方は目と目が合うなり微笑んで手のひらをひらひら。彼らは同じ戦術師同士レッドとも交流が深いようで恐らく図書室で話を咲かせていたのだろう。

「帰るわよ」

バトルルームに立ち寄ったからには大乱闘を嗜んでいくものかと思いきやこれまた寂しい発言。素直に返事して駆け付けるルキナを追いかけようとしたがよろめきながら振り返り、ブルーは此方に向かって深いお辞儀。先程テンションを振り切って周囲を置いてけぼりにした失態に気付いていなかったというわけではないようで反省はしている様子に苦笑い。

「もう少しゆっくりしていったらいいのに」

それはともかくとしても日が沈むか沈まないかといった時間帯に退散とは気の早いことで。先輩と後輩なんて関係上遠慮しているのかもしれないが寮は寮として区間が分けられているとはいえ厳格な空気感の漂う司令塔よりは羽を伸ばせるのだろうし。

「気持ちは有り難いけれど」

ルフレは短く息を吐き出した後で。

「門限があるの」


『第四正義部隊フォーエス部隊』といえば勧善懲悪の鑑たる隊長のロックマン率いる正義の集団。如何なる悪であれ情けをかけるな正義の鉄槌を下せというのは隊長の意志のみに留まらず皆が皆洗脳のように脳の細部にまで刷り込まれている。

そんな彼らだ。五つあるとされる正義部隊の中でも最も期待を寄せられその実多くの仕事が舞い込む。先輩風を吹かせていられるのも今の内かもしれないと思うほどに活躍を見せている彼らがまさか子どものように門限まで設けられているなんて──


「冗談よ」

冗談だった。

「その顔は"信じた"という顔ね」

そしてこのドヤ顔である。

「る、ルフレ……」

これにはお兄ちゃんも苦笑い。

「夕方から会議があるの」
「ええっ?」

これまた珍しい。

「いつもは朝の内に済ませるんだけどね」
「予定が合わなかったのよ」

恐らく定例会議を開くには人数が大きく欠けていたのだろう。一人二人くらいなら差し支えないだろうが五人六人ともなってくれば話は別でそれならばと日時を改めた結果か。勘繰ることに時間を割いてはいけないルーティは頷き手を振って見送る。

「またいつでも遊びにきてね」

四人は柔らかな表情を浮かべて手を振り返したりお辞儀をするとバトルルームを後にした。僕たちもこれからどうしようかとルーティがロイ達に向き直る一方で先程の四人の話す声が遠ざかっていく。

「ミカゲ……流石にもう戻ってきてるかしら」
「意外と長引いているみたいだね」
「あ! 帰りに石屋に寄ってもいいですか!」
「本人の意思を尊重するべきですよ、ブルーさん」
「ううぅ、それは……」
「何の話をしているんだい?……」
 
 
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