黒炎の絆



かつて。ポケモンを人間の支配から解放すべきだと自ら人々の前に立って諭すように謳い、世界征服を目論んだ男がいた。

かの者の演説は紛うことなく理に適っていたのだ。だからこそ人々は猛獣を閉じ込めた檻の鍵を差し出そうとした。不運だったのはそこへ現れた当時無名とされていたトレーナーに全てを覆されたこと。


いつだってそう。

盤面を崩すのは直向きな正義。


けれど、どうだろう。決して付け入る隙のない舞台を作り上げるこのタイミングは。人々に解放を促すのではなくポケモン側が暴走によって事件を起こすように仕向けて人々に危険な生物と認識を改めさせ隔絶かくぜつを余儀なくさせる──そうして追いやられたポケモンを一網打尽にしてしまえば極めて優秀で唯一無二の世界征服の足掛かりとなる兵器の完成だ。

最初からこうすればよかったのだ。無理に知恵を絞る必要はない。先駆者達の成功や失敗を継ぎ接ぎに問題点を見直せばこの通り。こうなった以上誰にもこの天才的な野望を止めることはできない!


「、!」

森林都市メヌエルの末端、発電所にて。

「チッ」

建物周辺で不審な動きを見せる人影を見つけて漆黒の雷撃を見舞ったが、案の定。雷撃は見えない力によって捻じ曲げられ明後日の方向へ──ひと足早く現場に着いたスピカは狼から飛び降りると構えた。

「リーダー」

影虫を用いて姿形を変異させていたダークウルフ達も順々に元の姿へ。呼び掛けに「ああ」と応えてスピカが見つめる先には計四つの影があった。向かって一番奥に佇む男こそ今度の首謀者に違いない。そして立ち位置こそ僅かにズレはあるがこの場所から一歩だって通してなるものかと立ちはだかるのは何れも見覚えのある戦士たち。そのどれもが無条件でメガシンカと呼ばれる形態を維持し続けており双眸に彼等の元ある意識が宿ってるようには思えない。

「リーダーが大本叩いてぇ、一人一匹っスかぁ?」
「口で言うほど簡単な相手ではありませんよ」

装填の音が鳴る。

「主役の座なんざ柄じゃねえからな」

頬に黒の閃光を跳ねて。

「……行くぞ!」
 
 
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