黒炎の絆
僕だって、……レッドにしがみついて離れないローナを傍目にルーティは眉を寄せた。……僕だって、移動の直前に声を上げてくれたフォックスを──皆のことを信じ切ることが出来なかった。普段それ系統の文言を口癖のように繰り返していた癖に情けないことだ。事情や立場的な抗いようのない大きな問題があったのだとしても。それでも、僕は……今の今更他の誰かのことを大きく言えるはずもない。
「……大丈夫だよ」
レッドは静かな口調で答える。
「だって、……大丈夫だったでしょう?」
多くを語りかけたり訴えかけない彼の姿勢があまりにも優しかった。ローナはそこでようやくそろそろと顔を上げて今にも泣き出しそうな表情で頷く。
「──行きましょうッ!」
襲いかかる死体と思しき人間を背負い投げして地に伏したところでルルトが声を上げた。
「この場は秘密結社SPに任せてちょうだいッ!」
そうだ。僕たちがこうしている間にも犯人は移動を始めているかもしれない。そうなってしまえば今度こそ確定的な居場所が分からなくなる。ルーティも電撃を打って対処したところで深く頷いた。
「俺らは先に行く!」
ハッと振り返るとスピカは黒く塗り潰された狼のような生き物の背に跨っていた──恐らくその正体はダークウルフなのだろう。その傍らには同じく黒く塗り潰された狐と鴉のような生き物の姿も。
「発電所だろ!」
「、うん!」
「先に行って足止めしておいてやる!」
ルーティが頷いて応えた後でスピカが
「……僕たちも行こう!」
事態は一刻を争う。
「レッド!」
他が急ぎこの場を離れる中で幼馴染みの声がレッドを呼び止めた。レッドは振り返る。
「お前、そいつは」
恐らくは先程の光線の回避の為にモンスターボールに戻したネロのことを話しているのだろう。これから発電所に向かうメンバーの中で唯一メガシンカの形態を持っているのが彼。万が一のこともある──グリーンが返答を待っていると。
「答えを出すのは」
帽子の陰りか否かレッドは表情に影を差しながら。
「今このタイミングじゃないと思ってる」
握り締めたモンスターボールが。
ほんの一瞬、振動して。
「そうか」
グリーンはそれ以上は何も咎めずに。落としかけた視線を真っ直ぐに正すとその背中を押すが如く。
「……行ってこい!」
「……うん!」