黒炎の絆
時折放たれていた光線など比ではない。草木を薙ぎ倒しながら警戒した先から放たれたそれは百センチ以上の幅で。叫ぶルーティの声も掻き消される程の轟音と共に凄まじい勢いで。
「ネロ!」
辛うじて光線の範囲外まで退いたが対処に追われて動き出しの置かれた彼を目にリムが叫んだ。纏わり付く死体と思しき人間を引き剥がして蹴り飛ばしたがその頃には目と鼻の先。このままでは直撃は免れないとルーティが冷や汗を垂れたその時。
「──戻れッ!」
今の声は。
「な」
一線の紅い光が真っ直ぐネロを捕らえたかと思うと否応なしに頭の先から爪先まで包み込んで。そうして強制的に引き戻した先には特徴的なカプセル式のボールとそれを手にしていたのは──
「レッド……!?」
誰がどうして此処に居るのかといった疑問はもはや今更だろう。ネロが元居た場所を光線が地形ごと掻っ攫う勢いで過ぎ去るのを見届けたレッドを今度挟むようにして男女が進み出る。同じくモンスターボールを構えた彼らの正体はレッドのライバルであり幼馴染みでもあるグリーンとブルー。
「俺たちに任せろ!」
「この作戦が成功する確率は百パーセントです!」
見ればモンスターボールを構えていたのはこの三人だけではない。この事態に参じた(ルルトとラッシュ除く)フォーエス部隊の隊員までもが攻撃を中断していつの間にかモンスターボールを構えていたのだ。
「お願いします!」
──そうか! ルーティは合点がいったように目を見張る。暴走メガシンカしたポケモン達は浴びたエネルギーの影響から自身の限界を顧みず命が尽きるまで戦闘を続けてしまう。それを唯一止める術として発案されたのが恐らくモンスターボールを使って捕獲するという単純且つ大胆な作戦。
確かにこれなら暴走を抑え込むことができる──先の戦いで疲弊しているのなら尚のこと。ルーティは次々とモンスターボールに捕えられていく様を目に希望見た。さっきまで、自分達が応戦していたのは彼らを追い詰める行為だったのではないかと絶望に近しい感情を抱いていたが。
……繋げてくれた。
僕たちのしていたことは無駄じゃなかった──!
「レッドぉ!」
完全に振り返るよりも早く駆け付けてきたローナがレッドの胸の中に飛び込む。続けざまシフォンが側まで来るとレッドは眉尻を下げながら。
「来るのが遅くなってごめんよ」
「いいえ──」
シフォンは柔らかく安堵の表情を浮かべる。
「来ないかと思った!」
その一方で。
「……思っちゃった」
ローナは勢いよく言った後で。
「パートナーなのにっ」
その胸に頭をぐりぐりと押し付けながら。
「レッドは来てくれたのにっ」
なのに。
「信じなくて……ごめんなさいっ……!」