黒炎の絆
そんな。だって、……どうして。
心の底から歓喜しているのに困惑が拭えない。
「どうしてここにっ」
居ても立っても居られず疑問を投げかけたルーティの死角から攻撃が舞い込んだようで。遅れて気付いて振り返ったがまともに頂けばひと溜まりもないであろうそれはもう既に巨躯の男が受け止めていて。
「──なァに。簡単なことでい」
ラッシュはニヤリと笑う。
「俺たちゃフォーエス部隊の中でもちィっとばかし特殊な秘密結社『SP』をやってるモンでさァ」
正義部隊にとって国の命令は絶対。けれどその命令が必ずしも意に沿ったものばかりとは限らない──そういった望まない事態に備えて隊長であるロックマンは新しく迎えた隊員を更に振り分けた。
それが、秘密結社『SP』。国の監視の目に触れないように暗躍する影のチーム。万が一国の関係者に勘付かれるなど立ち回りに失敗した際は正義部隊の名誉を守る為その場で切って捨てられるリスクを背負っているまさしく諸刃の剣のような存在なのだとルルトが熱く語ったのを未だ色濃く覚えている。
「でもっ」
それでも尚疑問は拭えない。
森林都市メヌエルは今現在ホログラムの壁によって囲われている。後から掻い潜るにせよ最初から忍び込んでいたにせよ──世界中を巻き込んだこの事態にそこまでの動きをしてしまっては国の関係者に勘付かれるのも時間の問題かもはや手遅れか。
「問題ない」
皆まで言わずとも疑問の内容を察知したのであろうワイヤーを使って死体と思しき人間を木の幹に括り付けながらジョーカーが答える。
「宛てがあるからな」
……え?
「なァにが"宛て"だッ!」
不意に漆黒の雷が駆け抜けた。それはバチバチと耳に障る激しい音を立てながら不純物を掻っ攫うかのように暴走メガシンカしたポケモンや死体と思しき人間を情け容赦なく弾き飛ばして。
「あンの堅物正義厨!」
苛立ちを含んだこの声は。
「急に呼び付けたかと思えばこき使いやがって!」
きっと今日ほど待ち望んだ瞬間はない。
「──スピカっ!」
幼馴染みの呼ぶ声に。
この状況だというのに当の本人は照れ臭そうに。
「……よう」