黒炎の絆
……これ以上の戦闘は。相手の限界値を突き破って死に至らしめる可能性すらある──
「だからって」
状況を理解したところで。
「どうするのよ……!」
事態に変化をもたらすというわけではない。
「こうしている間にも犯人は逃げてしまうかもしれないのよ!?」
あくまで推測の域を出ないものだったとしても可能性があるなら易々と踏み越えるわけにはいかない。此方の気を知る由もなく仕掛けてくる彼等の対応に追われながら焦りの声を上げるリムにルーティは顔を顰めた。この事件の犯人とやらも当然そこまでのことを見越しているのだろう。
だからといって彼らを放置すればどんな混乱を招くか。それが分からないほど馬鹿じゃない。
「おにぃ!」
戦わずに足止めをするだって?
事件を引き起こした犯人を追いかけるだって?
「!」
肝心な時に躊躇うなんて。
パートナーが知ったら笑うだろうな。……
「はああぁあああッ!」
勇ましい声と雷が降り注ぐ。
「下がりなさいッ!」
暴走メガシンカしたポケモンの攻撃が目前にまで迫ったが直後。高所から繰り出された稲光を帯びた踵落としが土埃を舞い上がらせて。覇気によるものであろう一陣の風にその妨げが弾かれれば目を見開くルーティの前に降り立つ少女の杏色の髪が揺らぐ。
「──影のある所に!」
不気味に呻く声が掻き消される。
「必ず! 導きの光は差す!」
今日これほど歓喜したことはないだろう。
「刮目なさいッ!」
正義の鑑たる彼らの登場を。
「第四正義部隊フォーエス部隊──見参ッ!」
細部にまで。
「存じないなら学びなさい」
響いて、染み渡る。
「ヒーローは遅れてやってくるものだわッ!」