黒炎の絆



幸いだったのはその影の正体が例の銃器を持った死体と思しき人間ではなく暴走メガシンカ状態のポケモンだったという点。それでも不意を取られたのは紛れもない事実でネロは仕掛けられた蹴り技を反応を遅らせながらも腕を構えてダメージを軽減させると蹴り払って距離を取った。次なる相手は接近を許すよりも先に足首に蔓を巻かれて持ち上げられると遠く軽々放り投げられて──ネロは振り向く。

「悪りぃ! シフォン!」
「言っている場合じゃないわ!」

シフォンは蔓の鞭を引き戻すと構え直しながら。

「構えてちょうだい!」


また、違和感だ。


「たああっ!」

あれだけ弱音を散らしながらも果敢に立ち向かって対処するピチカに遅れを取らないように攻撃を打ち返し回避に重点を置いて立ち回りながらルーティは拭い去れない違和感に顔を顰めていた。

……自負するようで申し訳ないが自分たちは世界を幾度となく救ってきた歴戦の戦士だ。いくら暴走メガシンカ状態と言えども能力の差は歴然。鼻に付く例えとはなるが取るに足らない相手といっても過言ではない──なのに何故か単純な人数差だけの問題に留まらない劣勢に近い状況を強いられている。

強制的にメガシンカさせて制御コントロールを失わせるだけの効果だとばかり思っていたが此方ばかりが息を切らせているこの状況はそれだけじゃ説明が付かない。相手だって生き物だ。必然的に疲労して動きが衰えてもいい頃合いだというのに。……


これはあくまでも推測の域を出ないが。

例のエネルギーによって暴走メガシンカを引き起こされたポケモンの能力値が常にオーバーフローしているような状態に陥っているのだとしたら──


「……戦っちゃ駄目だ」


ルーティは呟く。

「ふえっ」

きょとんとした顔でピチカが振り返った。

「戦っちゃ駄目だ!」
「お、おにぃ?」
「あのエネルギーは無理矢理メガシンカさせて暴走を引き起こすだけのものじゃない!」

会話が耳に入ったのであろうローナは攻撃を掻い潜りながら戦線から離脱すると地面を軽く蹴り出して浅く跳び上がった後にルーティの傍らに着地する。

「どうしたってのさ!」

構えを解ける状況などでは決してなく呻く暴走メガシンカしたポケモンの群れを見据えながら。

「多分だけど──あのエネルギーを浴びたポケモンはアクセルを深く踏み込んだ車みたいに全能力を常時最大出力しながら戦うようになるんだ。その上で暴走状態で正しい思考も信号も働かないからあっという間に体の限界を超えて……」

無論都合よく待ってくれるはずもない。言葉を遮るようにして飛んできた攻撃をルーティ本人も対処にあたった為最後まで上手く聞き取れなかったが凡そ把握できた。ネロは顔を顰めながら舌を打つ。

「……そういうことかよ」


どうりで。

いつまで経っても相手が戦闘不能にならない訳だ。


「つまり俺たちは」

募る苛立ちに青筋さえ浮かべながら。

「助けるつもりで寿命を縮めてたってことじゃねえか──!」
 
 
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