黒炎の絆
あ、と。声を漏らしそうになった。
視界の端でリオンが半笑いを浮かべるのを見て。
「駄目ですっ!」
声を上げたのはブルーである。
「メガシンカは、メガシンカしたポケモンに物凄く負担がかかるんです!」
えっえっ、と困惑するロイに詰め寄りながら。
「条件が揃ったからといって無闇矢鱈に使っていいものでもないんですよ!」
「わわわ分かった、分かったから」
観念したロイが両手を軽く挙げて降参の意を示すとブルーは腰に手を当てながら前のめりになっていた体を起こして息をついた。
「じ、じゃあ大乱闘で使ってるのはどうなんだよ」
次また同じ相手に釘を刺されるのは御免だとばかりに両手を軽く挙げた姿勢自体は崩さないままロイが回答を求めて顔を向ければ。
「……あのシステムの中で使う分には不思議と体に負担が掛からないんだ」
リオンは静かに頷いてから答える。
「その辺りも考慮して設計されているのだろうな」
……誰が、とは言わないが。
「へぇー」
ロイはようやく両手を下ろした。
「そういえば」
思い出したように。
「ネロもメガシンカ使えるんだろ?」
釣られて、ルーティも視線を向ける。
「ああ」
「見たことねーけど」
「知るかよ」
おやこれは。
「レッドに聞けって」
何やら深い事情がお有りな様子。
「私も見てみたいですっ!」
(話さないのだから分かるはずもないが)彼の気も知らずブルーは胸の前で手指を組んで背景にキラキラしたエフェクトを浮かべながら目を輝かせる。
「リザードンには二種類のメガシンカ形態があるんですよ! ネロさんは物理型ですから適正はXの方だとは思いますがYの姿も興味があります!」
専門用語が飛び交う。
「そうでしたっ、聞いてください!」
何かのスイッチを踏んでしまったようだ。
「最近になってゲッコウガもメガシンカが出来るようになったそうなんです! ミカゲさんに話したらオタ活に忙しいからメガストーンに金銭を割けないとか言われてしまったのですが、そんなこと心配しなくても私が幾らでも出すのに……! メガシンカしたミカゲさんとメガシンカしたネロさん……見てみたいと思いませんか!? もちろんトレーナーを担当するのは私とレッド君で!」
厄介オタクかな?
「そこまでにしなさい」
バトルルームのドアが無機質な音と共に開く。
「部屋の外まで聞こえてるわよ」