黒炎の絆
本来聞こえるべき音、って。ルーティは自然な動作で自身の胸の上に手を置いた。どくん、どくんと生を刻むそれは確かに胸の内側にある。いつの間にか同じ動作をしていたピチカと恐る恐る顔を見合わせてそこで初めて互いに青ざめていることに気付く。──女の人が死体だったからユウもリオンも能力を発動出来ずに不意を突かれてしまった?
「死体が、動いたの……!?」
自身も抱いていた疑問をピチカが口にする。
「仮にゴーストタイプのポケモンだったとして心臓が動かなくたって魂は在るはずだもの。そこは例え私が気付かなくても今度は二人が気付くはず」
そうしてパズルのピースが合わさっていく感覚は決して気持ちの良いものではなかった。彼女の言い分が正しかったとして誰が? どうやって死体を──解き明かす間もなく茂みが揺れ動いて三人は思わず身を寄せ合う。未だかつてないほどに動悸は加速して正しい呼吸さえ儘ならない。自分がこんなことではいけないとルーティは二人よりひと足早く呼吸を正すと体の表面に青の閃光を跳ねさせた。
「ルーティ」
「おにぃ」
不安げに呼ぶ声に挟まれながら。
見詰める先で茂みが大きく揺れ動いた。
「──下がって!」
ルーティは稲妻を解き放つ。
「ぜにゃぁああぁあっ!?」
、……この声は。
「あぁあっ、危ないじゃないかあっ!」
茂みの中から現れたのは。
「ろ、」
「ローナぁ!」
名前を呼ぼうとしたルーティの声は見事ピチカの声によって掻き消されていた。
「おぉっとぉ」
「うえぇ……無事でよかったよぉお……!」
勢いよく飛び出していったかと思えば次の瞬間にはローナの胸の中。しゃくりあげる彼女をよしよしと宥めるローナの後ろからシフォンとネロまで現れてしまえばルーティもリムも胸を撫で下ろして。
「何だ。お前たちか」
「何だとは何よ」
「無事でよかったわ」
「それはこっちの台詞だよ……」