黒炎の絆
この場所は──朧げだが記憶の中の繁華街の外れにある森の中に相違ない。視界の端にある木と木の間を縫って抜ければ見慣れた獣道に出られるはず──そんなことを考えるルーティの横でピチカは失意に陥った様子で瞳を震わせていた。
「あの時、だ」
フラッシュバックする。
「女の人が変な機械からエネルギーを」
ピチカはその時の状況を思い返しながら呟く。
「だから、暴走メガシンカしちゃったんだ」
恐らく推測は間違っていない。それでも尚不可解な点が後を絶たず頭を混乱させてくる。
「今までの事件も?」
ルーティが言うとピチカはゆっくりと顔を向けた。
「そんなはずはないよね」
「悪いことを考える人が他にもいたってこと?」
情報が少ない以上はそれしか考えられない。
「でも、だったらあの女の人は重要な情報を持っていたかもしれないってことでしょ」
眉を寄せながら悲痛な面持ちでそこまで言った後で疑心暗鬼の視線を注がれた先に居たのは。
「なんで止めたの?」
言葉に詰まる少女の姿。
「……リム!」
「ごめんなさい」
彼女もまた苦悶の表情を浮かべていた。
「違和感があったのよ」
彼女は誰よりも音楽に通じている。
だからこそ──負けず劣らず"耳がいい"。
「ずっと、考えていたの」
リムはその時の光景を思い起こしながら語る。
「未来を予知する目を持つユウと心の声や感情を視通す目を持つリオンが気付けなかった理由」
私だけが感じた違和感。
「本来"聞こえるべき音"が聞こえなかったのよ」
え? とルーティもピチカも声を揃えた。
「だから二人も反応出来なかった」
「どういう、」
「二人の能力は死者相手には発動しない」
ざわざわ、と。
吹いた風が木々を揺らして不穏な音を奏でる。
「それって」
背筋を這い上がる恐怖。
「そう」
さあっと血の気が引いていく。
「あの女の人は──死体だったってことよ」