黒炎の絆
リオン、と眉尻を下げながらか細い声で呼んだ後でルーティはハッとした。
「ぐ、ゥヴ」
口端から唸り声を漏らしながら。地面に付いた手の甲に血管を浮かせて。ザワザワと不穏が渦巻く中月明かりがその人の影を地面に落とした。凡そ言葉では言い表せない目まぐるしい変化にルーティは顔を青ざめながら口をはくはくとさせるばかりで声にならない──なるはずもない。駆け付けてきたリムとピチカが両側から腕を掴んで引いた。それでも足は竦んだまま、上手く動かない。
「ぁ……あ……」
髪の色は鉛色から朧げな浅葱色にかけてのグラデーション。瞼の下から覗いた双眸は感情の篭らない天色で姿形だけでない人物までもがすり替わってしまったのではないかと錯覚させる。著しい変化を前に言葉を失っていたルーティは彼の瞳が此方を向くと弾かれるようにして瞬間的に我に返った。
──暴走メガシンカだ。
「きゃあっ!」
砂塵が舞い上がったのは──攻撃を仕掛けてくるよりも先に視界の妨げとして地面にエネルギー弾が打ち込まれたからである。今この状況下で誰が味方で誰が敵なのか残念ながら判別も付かないが自分たちに背を向けて立ちはだかるこの人は信用していいのかもしれない。
「!」
ユウは振り向きざまに手を翳す。
「ゆ、ユウ」
彼の姿は小柄な見た目となっていた。それが何を意味しているのかは嫌でも理解できてしまう──呟くように呼んだルーティに応えないままユウは顰めた面の眉を小さく震わせると超能力を発動した。
背景が歪む。
音も意識も遠ざかる。
「、……」
後に残ったのは。
堕ちた双眸の唐紅だけ。……
「う」
これが夢だったならどれほど良かったことだろう。淡い期待を抱いたところで弾力のない地面は冷たく現実を伝えるだけ──ルーティは重く瞼を持ち上げて目を覚ました後で上体をのっそりと起こす。……ユウがテレポートで逃がしてくれたんだ。
「おにぃっ」
先に目覚めていた様子のピチカが慌てて縋るようににじり寄った。
「ユウとリオンはどうなっちゃったの?」
「ピチカ、」
「大丈夫なんだよね?」
詰めるピチカの肩の上にリムは手を置いて止める。
「あの二人は暴走メガシンカしたわ」
その事実は。
分かっているものだとしても。
「……なんで」