黒炎の絆
反応が遅れたルーティを庇ったのは──リオンだった。攻撃の方向を察知して飛び込みながら波導を滾らせた拳を使って相殺する。強い力の衝突により生じた見えない風の波紋にルーティは足元がふらつきそうになりながらもしっかり踏み堪えると見据えた先で攻撃を仕掛けたその正体を視界に捉える。
闇夜に揺蕩う藍色の髪。
ぼうっと浮かぶ紅蓮の双眼──
「ミカゲ!」
ルーティは思わず叫んだ。
「ミカゲ殿か?」
「暴走メガシンカしてるんだ!」
成る程、とリオンは波導を帯びた拳を構えた。
「幸いにも私と彼は相性が良い」
語る最中にミカゲは此方から視線を外さないまま右手を高く挙げると巨大な水手裏剣の生成を始めた。狙いを察したピチカが電撃を打ち出すもその場に丸太を残して瞬時に移動、今度は高く聳え立った木の天辺で満月を背景に生成を再開する。
「ここにいる皆が戦えるわけじゃないわ!」
避難誘導しながらリムが叫ぶ。
「あんなの使われたら怪我人が出ちゃうよお!」
メガシンカはそのポケモンの能力を否応なく最大限にまで引き出す──その上で巨大な水手裏剣を打ち出されたらピチカの言った通り怪我人が出るどころじゃない大きな被害が出る可能性だって!
「避難誘導に徹してくれ!」
土を強く踏み込む音を拾ったリオンは振り返らないまま留めるようにして声を上げる。
「、でも!」
眉尻を下げるルーティを尻目に薄笑みを浮かべて。
「私だって最強の主人に」
波導を内側から増幅させて踏み込めば。
「──伊達に躾されてきた訳ではないからな!」
風が突き抜ける。
「……!」
後に残ったのは砂塵だけだった。慌てて目で追ってみればリオンは波導を滾らせながら暴走メガシンカ状態のミカゲと戦っている。防戦一方という話でもなく積極的に攻撃を打ち出して相手に回避か防御の二択の選択"だけ"を強いているのだ。
メガシンカもないのにあそこまで戦えるなんて──彼の心を読む能力の本領を見せつけられながらも我に返ったルーティは避難誘導に取り掛かる。ちらっと視線を動かして戦況を確認したが悪戦苦闘という状況でもないどころかユウまで参戦しているというミカゲ視点では絶望的な始末。
X部隊の誇る最強の目を持つ二人だ。
……これなら!
「、?」
不審な音を拾ったのだ。音楽をこよなく愛する彼女が音に関して間違うはずはない。
「リム?」
「何か来るわ」
音の位置を察知して振り返りながら叫ぶ。
「──避けて!」