黒炎の絆
ぶつり、と。
音が途切れたような違和感があった。
「ぁ」
小さく声を洩らしたのは群衆の中にいた一人の男。気にも留めず体をぶつけて通りすがる人々に踏み堪えられずその場に両膝を付いて。気付いたルーティが咄嗟に駆け付けようとしたが変化は訪れる。
「あ"あ"ぁ"ー……ッ!」
悲痛な叫び声をあげる男の体はたちまち虹色の風に包み込まれた。丸く囲って渦巻き、吹き荒れるそれは長く時間を有することなく男の体を解放したかと思ったが男は姿形も様子も著しい変化を遂げていて──理解する間もなく、振るう。
無差別に。
見境もなければ容赦もなく。
「きゃあぁああぁああッ!」
何が、起こった?
「逃げろ!」
攻撃に倣って土煙があがる。
「──暴走メガシンカだ!」
なんで。どうして。
こんな見計らったかのようなタイミングで──!?
「皆、逃げて!」
「あっち!」
ルーティはハッと我に返る。気付けば他の四人は逃げ惑う人々の避難誘導をしていた。そんな中で無慈悲にも攻撃が打ち込まれれば前に出たユウとリオンが率先して対処──突如として暴走メガシンカを始めたポケモンは複数いる。……どうして!? その理由を探るような時間も余裕もあるはずがない。
「っ……皆!」
喧騒に掻き消されないよう声を張り上げる。
「落ち着いて逃げるんだ!」
これが落ち着いていられるはずもないが言霊を信じる他ないのが現状。避難を優先してくれてはいるが我先にと押し除けながら前に出る人も目立つ。足を縺れさせて転んだ子どもを見つけたルーティはすかさず駆け付けて手を取って起こした。案の定泣き出してしまったが正直この状況下では慰めている時間さえ惜しい。焦燥から八つ当たりに近い感情まで生まれてしまいそうで自分で自分が嫌になる。
「すみませんっ!」
かと思えば母親と思しき女性が駆け寄ってきた。愛想笑いなど出来るはずもなく苦笑いにも近い笑みを浮かべながら子どもを託したが刹那。
「──ルーティ殿!」