黒炎の絆
……常識では考えられない事象を目にした時。
「は」
本当の意味で言葉を失うのは。
「、え」
言語を会得している生き物全般に言えるのだろう。
「なにあれ……?」
時を同じくして飲食街にあるファミレス外の待合席に腰掛けていたルーティ達は別所のネロ達と同じく唸るような地響きと空気の揺れを感じ取ると困惑や警戒といった感情を入り混じらせながら立ち上がったが、直後異変の正体を見つけたピチカに釣られるようにして顔を上げると絶句した。
森林都市メヌエルを囲うように突如として立ちはだかった不気味に赤く灯るホログラムの壁──ご丁寧に弓形に同じホログラムの蓋まで被せられており、辛うじて紺碧の空に散りばめられた星を数えられる程度には透けているが問題はそこではない。
「何かの演出……とかじゃないわよね?」
怯えた顔でゆっくり後退した後で寄り添うピチカをそっと抱き留めながらリムは眉を寄せて訊ねた。
「周囲の様子からして有り得ないな」
この事態に居合わせたのはもちろんルーティ達だけではない。騒然とした空気の中頭の上の犬耳を頻りに動かして実際の声だけではない心の声も拾ったのであろうリオンが伝えると。
「……確かに」
腕組みをしたユウは自嘲気味に笑って。
「暴走メガシンカをする恐れのある危険因子を閉じ込めるには打って付けの檻だな」
檻──!?
「そんなことっ」
「自国への強制命令が下されたこのタイミングで。こんなものまで見せられておいて何が否定できる」
じろりと睨んで見下された上での冷罵に続く言葉があるはずもなく。
「僕たち、どうなっちゃうの?」
ピチカは不満を訴える。
「処分とか……されちゃわないよね?」
「──処分だって!?」
そして騒ぎは波紋のように。
「処分!?」
「どういうことだ!」
「そんなこと聞いてないわ!」
「おかあさぁん!」
しまったとばかりに口を両手で覆うピチカだったが後の祭りというもので。一帯は瞬く間に混乱に呑まれホログラムの壁に立ち向かおうとする者や建物の中へ避難しようとする者が入り乱れる事態に。
「ち、ちょっと待ってください!」
押しつ揉まれつ声を上げる。
「皆っ!」
例えこの訴えが届かないのだとしても。
「落ち着いて──!」