黒炎の絆



スーツの男は眉を寄せながらも観念したように瞼を閉じた。顎でしゃくるネロに従ってシフォンは蔓の鞭を手で引いて操りスーツの男を地面に解放する。

「……二ヶ月前」

男は地面に座り込んだ姿勢のまま。

「秘密裏に行っていた研究で我々はトレーナーとの絆及びキーストーンとの共鳴を必要としないポケモン単体でのメガシンカを促すエネルギーを人工的に作り出すことに成功した。その矢先だよ……メガシンカエネルギーを保管した特殊装置を何者かの手によって盗み出されてしまったのは」


電撃が走る、とは。

まさに今この瞬間のことを指すのだろう。


「……はぁ?」

長く連ねた回りくどい説明などこの際不要だ──メガシンカエネルギーの根源は遡ればポケモンの命そのものである。それを人工的に、それも前科持ちの研究施設が作り出したなんて邪推しない方がまず無理だ。最も感情的になって動いたのは信じられないといったような声を出したネロではなくローナの方で他二人が気付いた頃には荒々しく踏み出したかと思うとスーツの男の胸ぐらを掴んでいて。

「警察は!」

固く瞼を瞑って黙っている時点でお察しというものだった。警察に届け出れば事態は早く収拾が付けど今度自分たちの活動が危うくなる──これだけの罪を繰り返しておいてまだ自分の命が可愛いのか! 彼らにしてみれば今の状況だって研究の延長線上に過ぎないのだろう。知らぬ顔を通しておけば矢面に立つこともないってわけだ。ふざけている!

「つまり今回の事件には研究所と全く関わりのない第三者の存在があるということね」

シフォンが冷静に解釈を述べれば眉を寄せて睨んでいたローナもようやくスーツの男を解放した。

「そいつの居場所も知らないんだろうしな」
「だろうね。……最悪」

元凶だけ知れたところでこの事件を起こした犯人に辿り着かなければ意味はないのだ。

「平気な顔していられるのも今の内だから」

ローナは再び睨み付ける。

「事件が解決したら警察に突き出して」


その時だった。


「!」

唸るような地響きと空気の揺れ。

「、なに」

思い付く限りの自然災害とはまた違う──兄妹で訝しげに顔を見合わせた後で真っ先に異変の正体に気付いたネロは愕然としながら。

「……何だよ、あれ」
 
 
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