黒炎の絆
スーツの男に睨みを利かせたのは──ネロだった。
「き、君たちは」
「数年前そこで行われていた優秀な個体を人工的に生み出す実験の被検体って言やぁ分かるか?」
建物を顎でしゃくって示しながら遮るように差し出された回答にスーツの男は宙ぶらりんの姿勢のままそれぞれの髪の色を見比べて察する。
「……! RGB個体か……!」
「知っているみてェだな」
そうして明確な反応を示せば少女二人基ローナとシフォンも鋭い目で見据えた。
「わ、私は話に聞いたというだけで何の関与も」
「そんなことはどうでもいい」
ネロは詰め寄る。
「暴走メガシンカについて知ってるか?」
ローナ、シフォン、ネロの三人がリムとピチカから向けられた厚意を断ったのには理由があった。
自分たちの人生を狂わせたといっても過言ではないその根源……アルフェイン研究所であれば今度の事件について何か情報を握っているかもしれない──そうは睨んだが相手が相手である以上は憶測でも何でも足を踏み入れたが最後手痛いしっぺ返しをいただく可能性がないとも言い切れない。故に厚意自体は有り難く感じつつも巻き添えを避けるべく三人は断る選択を取って研究所へと足を運んだのである。
「出し渋ったって碌なことにはならねェぞ」
スーツの男があからさまな動揺から瞳を揺らすのを見逃さずネロは更に詰めた。男は反射で体を捩ったがそれで拘束から解放されるはずもなく。
「し、知らな──ひいっ!?」
次に進み出たのはローナだった。
「びっくりしたでしょ」
見ればスーツの男の首元には鋭利に尖った爪が突き立てられている。仕掛けた少女の腕には手の甲から肘の位置まで目に見えて血管が浮かび上がり一瞬にして変異したその手はさながら──
「……誰のせいだろうね?」
情けない声を上げて目尻に涙まで浮かべるスーツの男を目にネロはやれやれと溜め息を吐き出した。
「殺すなよ」
「殺さないよー。情報持ってそうだし」
「この場ではって話よ」
シフォンは依然としてスーツの男を逆さ吊りにしている足首に絡み付いた蔓の鞭の持ち手を握りながら希望を打ち砕くように言って冷たく視線を遣る。
「態度次第では……どうかしらね」