黒炎の絆



……あいつら、というのは。

「誘ってはみたのよ?」

痛い所を突かれたなとばかりにリムは途端にばつが悪そうな表情を浮かべながら語り出す。

「一緒に来ない? って」


ローナ、シフォン、ネロの三人は人間に迫害された過去の経験から住処を持たないどころか伝もない。あるとすれば現在トレーナーであるレッドの家という話になるのだろうがその本人と離れ離れになった今個人の判断で上がり込むような性格でも。

以上を加味してリムも、そしてピチカも誘いをかけたがどうやら断られたようだった。ただその断った時の様子がただ遠慮しているというよりは何か深い事情があるかのような振る舞いだったようで──


「大丈夫かなぁ」

椅子に座ったピチカは太腿の間に手を挟んで両足をぷらぷらと揺らしながら。

「こんな時だから一緒の方がいいのに……」


街から住宅地までを繋ぐ道から大きく外れた森の奥深く。切り開かれた地に三メートル程の高さはあるであろう電気柵で厳重に囲われた巨大研究施設──『アルフェイン研究所』。

白塗りで角張った建物周辺には警備員こそ配置されていないものの大きく囲うように有刺鉄線など不法侵入を許さない作りが施されている。過去何度も事件を起こしながらこの場所が存在するのは何故なのかと批判的な意見や運動もあるようだが所詮は田舎といったところで、息を潜めた甲斐あって今現在は多くの警戒から外れて生き存えている様子。……

「ひいっ!?」

出勤途中かはたまた退勤途中か定かではないがスーツに身を包んだ男が何者かとの逃走劇を繰り広げた果てに足首を絡め取られて転倒した。すぐに起きようとして地面に手を付いたが爪の痕を残しながら容易く引き寄せられた挙げ句建物の影に運ばれて逆さ吊り──暗闇に満ちた空間の中不気味に唐紅と碧の眼光が浮かび上がれば小さく悲鳴。

「うるさいってば」
「騒がないでちょうだい」

進み出たのは二人の少女に加えて一人の男。

「聞きてェことがある」
 
 
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