黒炎の絆
ウェイティングボードを書き換えて椅子に座り直す少女に感謝の言葉を伝えれば。
「どういたしまして」
肩を竦めて笑う。
「何処に行っても一緒ね。私たち」
まさか。
リムとピチカの二人に外で会うなんて──
「ホテルは何処も満室だそうよ」
二人のことだから真っ直ぐ実家に帰っているものかと思ったが外出を選択した理由は概ね一緒だった。辛気臭い表情を浮かべたままでは家族に余計な心配をかけてしまうだろう、と。外の空気を吸って体を慣らせば少しは落ち着くはずという魂胆で予め連絡を取り合って飲食街に足を運んだのだとか。
「だろうな」
「じゃなくて」
発言の意図に気付いていないはずもないのだが然して興味などなさそうに素っ気なく返すユウにリムはむすっとした表情を浮かべながら。
「どうするのよ。どうせ帰らないんでしょ?」
前述の通りユウとリオンの二人は実家に戻るのを嫌がる。無論駄々を捏ねて拒否反応を示すのではなく時として冷たく時として苦い表情で断りを入れるといったところだがそれはさておき──込み入った事情があるだろうとはいえまさかこの事態になっても腹を括らないとは。
メガシンカの形態を持つ種族であるからには実家に身を潜めた方が遥かに安全だとは思うが。それ自体は彼らもを理解しているはずだ諸々を含めてもまだ実家帰省の選択肢は秤を沈められないのだろう。
「ラブホがあるからな!」
おっと。
「野宿でいい」
「野外プレイでいいそうです」
「言ってない」
ユウはリオンの足を踏み付けながら。
「人の発言を曲解するな」
ここがファミリーレストランであるからには当然家族連れも居合わせている。発言はともかく情操教育の妨げにならない仕置きを選んだだけでもよし。
「あいつらはどうしたんだ」
それが痛みによるものなのか快感によるものなのか悶えながら寄り添おうとするリオンをノールックで押し除けながらユウは疑問を口にする。
「一緒じゃないのか」