黒炎の絆



うう、とルーティが言葉を返せずにいるこの相手はユウだった。居合わせたリオンに縋るような視線を向けたが笑顔を返されて撃沈。一抹の望みをかけたが裏も表もなく本心からの発言らしい。

「食事は済んだのか」
「ま、まだ……」
「だろうな」

口を開く都度釘を刺されているような気がする。

「さっさと歩け」

ユウはふんと鼻を鳴らして先を歩き出す。

はぐれても知らんぞ」


二人と鉢合わせたのは偶然──というのは嘘。帰省の都度乗り気じゃない反応を示す二人のことだから夕餉ゆうげの時間帯ともなれば飲食街の辺りを彷徨っているだろうと予測して何の気なしに探してみればこれがまた大正解。比較的身長が高めである二人は案外並んで歩いているのが目立つ。未来予知していたのか心の声が聞こえていたのか知らないがすんなりと受け入れてもらえて現在に至る。

とはいえ世間は平日だ。それなのにこうも飲食街が賑わっているのはやはり暴走メガシンカを受けた各国による強制送還が関係しているのだろう──心なしか不平や不満で空気が澱んでいるような気がして誰より敏感であろうリオンをちらっと見上げるルーティだったが今度は視線を返さない。どうしたんだと聞かれても困るので正面に向き直って息を吐く。


皆、納得していないんだ。


どれだけ緊急を要するのだとしても。

この事態に。……


「一時間待ちぃ!?」

嘆く声にハッと顔を上げる。

「さっきのレストランよりマシでしょ?」
「うぅ……どこも同じかぁ」

この特徴のある舌足らずな声は──

「あっ」

かと思えば向こうの方から気付いてくれた。

「おにぃ!」
 
 
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