黒炎の絆



きっと、それは。

彼女なりの優しさだったのだと。

「……ローナ」

いわゆる野生種の括りでトレーナー含む人間との関わりが薄かった以上は此方側の過激な思想にまさか寄り添えはしないだろうと。的外れな意見で神経を逆撫でされるよりはいっそ聞かなかったことにしてくれとばかりの牽制を密かに傷心しながらそれでも認めたくなくてそう思い込むことにした。

遠ざかる彼女の背中をただ見つめながら静かに拳を握るルーティを揶揄からかうようにカラスが鳴きながら夕空の先へ飛び立つ。どれだけ眩んでも吐きそうでも言葉を詰まらせた自分に追いかける権利はない。


"僕たち"は。

一体、何だったんだろう──


「……うん……うん」

すっかり日も落ち込んで空が紺碧に染まる頃ルーティは森を抜けて繁華街に移動していた。暗い話題の連続に空元気に振る舞う余裕すらないまま実家に帰宅したのでは余計な心配をかけるだけだと自分で自分を危惧して母親に通話で帰宅が遅れる旨を伝えている真っ最中。

「もう、大丈夫だよ」

念を押すように心配の言葉を重ねられて。

「子どもじゃないんだから」

何とか押し切った結果、通話の終了に成功する。

「子どもだろう」


ギクッ。


「あ、あはは……はは」

ルーティは苦笑いしながら携帯端末を仕舞った。

「まったく」

その男は視線を背けてぼやく。

「地上に降りてまで子守りをさせられるとはな」
 
 
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