黒炎の絆
リンクが戻ってきたのだ。時間にして十分から十五分程だろうか──二言三言で話が済まなかった辺り大体のことは嫌でも察せてしまう。静寂の中で扉の開閉の音はいやによく響くもので注目を浴びせる形となったリンクは表情ひとつ変えないまでも小さく息を吐き出した。そのままゆっくりと進み出る。
「全員、居ますか」
「えっと」
X部隊メンバー全員の意味合いじゃない。
多分、これは。
「ユウとリオンなら部屋におんで」
「そうですか」
ドンキーが答えればリンクは短く返して。
「上層部より通達です」
詳細に触れる。
「種族がポケモンのX部隊メンバーは如何なる理由があっても
リンクは双眸に冷淡な色を宿しながら。
「これは最大限譲歩した温情であり強制命令です」
やっぱり──
「……、そっか」
ルーティは腑に落ちた様子で呟くように言った。
「明日……メヌエルに帰るの?」
「そうみたいね」
不安げに見上げて小声で訊ねるピチカの頭をそっと撫でたリムが憂いを帯びた表情で答える。
「レッドはー?」
「あくまで対象はポケモンだけです」
「えー!」
この状況に全く見合わない普段と変わらない調子でローナは片頬をテーブルにくっ付けて伏せた上で手足を伸ばして唇を尖らせながら「つまんない!」と繰り返し駄々を捏ねる。
「みっともねーことすんな」
「兄妹の恥だわ」
ネロとシフォンが口々に咎めるも様子は変わらず。
「この強制命令は全域に及びます」
「我々もやることが増えたようだな」
リンクのひと言で察したのだろうロックマンは自嘲気味に笑って立ち上がった。
「はぁあ? オレ達までケツ叩かれんの?」
付き添いのパックマンは不快感に眉を寄せる。
「動き出しゲロ遅で大問題に発展したのはあっちの責任なのに怠すぎ……」
「パックマン」
「はいはい知ってます知ってまーす」
一部のこうした普段と変わらない態度や調子というものは個人的には救いになる。心にまで
「よぉーっす戻ったぞー」
そんなことを考えているから招いたのか。
「メガシンカをしたポケモンがトレーナー無しだとああも体調を崩すもんとはなぁ」
今の今まで体調を崩したユウの処置にあたっていた様子のドクターは現状を知る由もなく食堂に入ってくると後頭部を掻きながら。
「んまぁ薬は出したし二日三日屋敷に篭って安静にしてりゃ調子も戻るだろうよ……なぁに心配しなさんなパートナーさんが変な薬を出しゃしないか目を光らせてたもんで適切な薬しか処方してな、」
とまあそこまでべらべらと口達者に話したところでようやく状況に気付いたようで。
「……どうした?」
振り出しに戻るのだけは流石に憚られる。……