黒炎の絆
──エックス邸。
「凄い騒ぎになってるよ」
食堂の扉を閉めて入ってきたカービィがぼやく。
「こっちがダンマリなのをいいことに好き放題って感じ。ほんと暇人だよねー」
テレビでもネットでも今回の事件での話題で持ち切りなのだろう。上層部への報告はリンクが引き受けてくれているようだが連絡を回すよりも先に彼らの耳に入っていそうで頭が痛い。今の時代見聞き体験したものはその場で報告しないことには遅すぎるというのだから全て投げ出してしまいたくなる。
「今度の件は我々フォーエス部隊並びに隊長ロックマンの不徳の致すところだな」
腹を満たす以外に会合としても使われるこの場所でテーブルを挟んでルーティの向かいの椅子に座ったロックマンは膝の上で固く拳を握りながら。
「本当に……何と、詫びたらいいか……」
歯を食い縛るようにして絞り出された声と同時に深く頭を垂れるロックマンにルーティはぱっぱと周囲の様子を気にした後で慌てて手を振る。
「そんなっ、顔を上げてよ! 暴走メガシンカは誰だって予測の付かないことなんだから!」
「っ……いや……」
するとロックマンは苦渋の表情を浮かべながら。
「ミカゲの、暴走メガシンカは……」
衝撃的な発言をする。
「もっと前から……発現していたんだ……」
え?
「……知ってたの?」
ルーティは唖然としながら訊ねる。
「二日前──隊員の一人が街の外れで暴走メガシンカ状態のミカゲと接触した。呼び掛けには一切応じず負傷を理由に隊員はやむなく戦線離脱、その後は極一部の隊員間で情報共有しながら水面下で解決を図るつもりだったが」
願いの通りには至らず。
事態は最悪の結末を迎えた。……
「昨日だって殺されちゃってたもんね」
近くのテーブルで足をぶらぶらと揺らし頬杖を付きながら会話に混ざるローナの何気ない台詞に俯いていたロックマンの肩がびくりと大袈裟に震えた。
「あんだけピリピリしてんだもん。安易な気持ちで協力要請なんて出来ないよ」
「そっ、……そうかも、しれないけど」
ルーティは悲痛な面持ちで眉を寄せながら。
「同じ戦士で……仲間なんだから……僕たちのこと少しくらい頼ってくれても」
そこまで話したところで嫌な予感が脳裏を過り。
「……それとも」
言葉となって口を衝く。
「僕が……ポケモン、だから……?」